2006年の国内IT・流通業界は、「曇り/ところにより晴れ」──BCNがIT・流通業界44社の経営トップに06年の景気動向を天気図にたとえて聞いたところ、今年の空模様がこう浮かび上がった。昨年は、景気回復やセキュリティ特需もあって、企業のIT投資が活発化。逆に今年は、この好景気をさらに上昇させる強調材料が特になく、前半は薄日が差すような「曇り」との判断だ。国内の産業界は昨年、「勝ち組/負け組」が顕在化した。環境は好転してきたが、収益の向上とソリューション型事業への転換という業界全体の課題は、いぜんとして残されたままだ。雲間にのぞく青空を広げるためには、デフレ圧力に屈しない競争力の構築が求められる。
曇りところにより晴れ
景気好転だが収益構造に課題
BCNはIT・流通業界を、システム構築や受託ソフトウェア開発を行う「
開発系SIer」、パソコン、サーバーを含めたソリューションを販売する「
販売系SIer」、ハード、システムの保守、メンテナンスを行う「
保守・サービス」、流通卸の「
ディストリビュータ」の4業種に分類した。
“ミニITバブル”といえる昨年の好需要を持続できそうなのが「
販売系SIer」。政府の「IT投資促進税制」などがけん引し、設備投資が拡大したことで、主力のPCサーバーの今年度(06年3月期)出荷台数は50万台を突破する見込み。「今年も急速な需要拡大に販売体制が追いつかない」という声がある一方で、ソリューション能力は必ずしも向上していない。提案力の強化と人材育成が課題だ。
「
保守・サービス」は、オープン化の普及で、サービス単価が大幅に下落。この傾向は今年も続くが、大手企業ではセキュリティやコンプライアンス(法令遵守)のためにITIL準拠の運用・サービスに着目し始めるなど、好転材料は少なくない。
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開発系SIer」には、「晴れ」と「曇り」「にわか雨」という対照的な予測が混在する天気図となった。04年度決算では、不採算プロジェクトの特別損失計上が相次いだ。各社は、システム開発の受注基準の見直しやプロジェクト管理を徹底するなど、不採算案件の未然防止を図った。
05年度の中間期は、この防止効果が徐々に効き、さらにIT需要が拡大基調にあることに助けられ、営業赤字から一転して黒字化するIT企業が増えている。
負の資産を整理したことで、業界の構造改革は一巡。「この先2-3年、懸念材料はない」という強気の声もある。しかし、体力に余裕のある大手SIerが受注の拡大に重点を移す一方で、中堅SIerは不採算リスクを避けるために安全性の高い案件だけを選ばざるを得ないという状況もある。受託ソフト開発の低価格要求が依然として厳しく、「利益を確保するために、新たなソリューションを開発する」など、利益体質をどう確立するかが課題といえる。
「
ディストリビュータ」は、「
販売系SIer」と同じく法人向けPCサーバーが堅調に推移。一方、個人向けパソコンの販売は、サッカーワールドカップなど世界イベントが多く薄型テレビに需要が集中すると見ており、「前半は厳しい」状況に陥りそうだ。それでも、パソコン市場の拡大に向け「後半が勝負」と、エンジンをかけることから、全体的には「曇りところにより晴れ」という天気図になった。