佐相彰彦●取材/文
初年度黒字は達成するか!?
レノボ・ジャパンが05年5月に本格始動してから半年以上が経過した。残り2か月で初年度(06年3月期)が終了することになるが、果たして日本アイ・ビー・エム(IBM)時代に赤字だったパソコン事業の黒字転換を達成できるのだろうか。
向井宏之社長は、「初年度で黒字を実現できる」と強気の姿勢をみせている。これは、「05年は販売支援策を強化することに専念してきた。これにより、レノボ・ジャパンとしてパソコン事業が大きく飛躍する基盤が整った」からだ。
レノボ・ジャパンが真っ先に取り組んだのは、パートナープログラムの刷新だ。2次代理店に販売実績に応じてレノボから直接インセンティブを与える「レノボ・ビジネス・パートナー・リセラー・プログラム」を本格的にスタートしたのは昨年7月。プログラムの対象企業は、昨年12月末の時点で約600社に達しており、「日本IBM時代よりもリセラーの数は増えた」(向井社長)という。2次代理店が製品を仕入れるのは1次代理店経由となるため「日本IBM時代からの1次パートナーにとっても、メリットが大きいプログラムになっている」と強調する。
新製品の早期投入や短納期を実現するために、昨年10月15日には別のオペレーションで動いていた旧レノボ・グループの組織と旧IBMパソコン事業の組織をワールドワイドで統合。製品を開発するグループ「プロダクト・グループ」、SCMを推進する「グローバル・サプライ・チェーン」を設立した。これにより、「各地域に合わせたマーケティングを強化することになり、日本に合わせた製品を市場に投入できるようになった。加えて、潤沢に製品を供給できるようになった」(向井社長)と自信をみせる。
ほかにも、国内で電話による専任営業の新設や、全国各地のリセラーパートナーを訪問して営業の直接支援を行う「シンクエージェント」と呼ばれる担当者を50人配置するなどサポート面も強化した。自社の営業人員に関しては、「今年3月末までに現状より20─30%程度は増やす」ことも計画している。
そもそも、レノボ・ジャパンが日本IBM時代よりもパートナーへの販売支援策を強化したのは、IBMブランドのパソコンがレノボブランドに変わったことで、販売パートナーから「顧客企業がパソコンを購入しなくなる危険がある」と懸念する声が多かったためだ。ある大手ディストリビュータの幹部は「どのメーカー製パソコンを購入するかは顧客企業が決めること。レノボ製パソコンが売れず、ほかのメーカー製パソコンが売れたとしても問題はない」と冷ややかに指摘する。ほかにも「納期が遅いことから販売機会を失ったことがある」と漏らすパートナーもあった。こうした点について向井社長も「昨年夏頃までは、新製品の市場投入が遅かったことなどで、パートナーに多大な迷惑をかけた」と認める。
最近は、パートナーから「昨年後半から販売台数が増え始めている」「レノボブランドで新規案件を獲得したケースもある」などの声が徐々に挙がっている。設立当初に比べれば、販売しやすい状況で、「(レノボが)ようやく〝まとも〟になった」(ディストリビュータ関係者)との評価も出てきた。
向井社長は、「パートナーが抱いていたマイナス面を払拭したことで国内ビジネスは軌道に乗った」と断言する。初年度からの黒字達成は、残り2か月間でいかに前半の不振を挽回できるかにかかっている。 佐相彰彦●取材/文