情報セキュリティ製品・サービスの展示会「情報セキュリティEXPO」が6月28-30日の3日間開催された。3回目を迎えた今回は出展企業、参加者ともに過去最多を記録。出展企業は243社、3日間の合計来場者登録数は9万538人。セキュリティ事業に対するベンダーの意気込みと、ユーザーの関心の高さは依然根強いことを改めて示した。過去最大規模となったセキュリティ専門展から今のトレンドを探った。(木村剛士●取材/文)
依然根強い情報漏えい対策ニーズ
■出展企業は過去最多の243社に 情報漏えいの防止が今年も主流に 243社の情報セキュリティ製品・サービスが一堂に会して過去最大規模となった今回、受付にはユーザー企業の参加者の行列が発生し、会場内は出展企業関係者と参加者でごった返した。スムースに歩くこともできないエリアもあったほどだ。昨年10月に開催したセキュリティ展「Security Solution 2005」に比べて出展企業は約100社も増加。ITベンダーのセキュリティ事業にかける意気込みは依然健在だ。一方、ユーザー企業の情報システム担当者にとっても、セキュリティ対策への関心はやはり高い。
出展企業は、トレンドマイクロやインテリジェントウェイブ(IWI)、ハミングヘッズなどのセキュリティ専門メーカーだけでなく、NTTコミュニケーションズやNTTデータ、NECグループ、リコーなどのSIerやITサービス会社も顔を見せた。特にリコーは、文書管理の適切な運用方法を順序立てて説明するブースを用意。出展企業のなかでも最大規模のブース面積で存在感を示していた。
参加者の関心が高いとみられるジャンルについては、その製品・サービスを会場中央の特定位置に集約する取り組みもなされた。その分野は、「バイオメトリクス(生体)認証」「ドキュメントセキュリティ」「検疫ソリューション」「メールセキュリティ」の4部門。メールセキュリティと検疫ソリューションは新設で、メールからの情報漏えいと、不正PCの接続拒否は今年のトレンドであることを印象づけている。
全体を通して、情報漏えい対策をうたい文句にする製品・サービスがやはり多かった。昨年10月の「Security Solution 2005」の展示内容とそれほど大きな変化はない。
■内部統制・SOX法対応も関心高まる 訴求の差別化がポイント 「個人情報保護法」が05年4月に完全施行されて1年余りが経過したが、大企業における情報漏えい事件・事故が後を絶たない。加えて、今年1-4月にはファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」からの情報漏えいが頻発。この状況から推測すると、企業の個人情報保護体制はまだ万全とはいえそうにない。あるユーザー企業の参加者に話を聞くと、「情報漏えい対策は、やっとクライアントPC向けの暗号化ソフトを導入したくらい。情報を持ち出させないための製品・サービスを検討している最中」だという。
ユーザー企業の対策状況はまだまだ道半ばで、そのユーザー環境を見越し、ベンダーは変わらず情報漏えい対策製品・サービスを主要商品に位置づけている。大塚商会のブースでは、「Winny対策」を前面に押し出し、多くの来場者を集めていた。
また、情報漏えい対策と並んでキーワードに台頭してきたのが、「内部統制」と「日本版SOX法対応」。クオリティのブースでは、「日本版SOX法」などの法対応と内部統制をテーマに据えたプロモーション活動を実施。そのうえで、自社のソフトウェアでどんな解決ができるかを丁寧に説明していた。
「日本版SOX法」への対応や、内部統制力の強化はユーザーにとって関心が高い分野であることは間違いないが、ITがどのように貢献するかは不透明な部分が多い。クオリティでは、その点を解消することに力を注いでいた。
ここ数年、IT系イベントの集客力低下が叫ばれてきたが、「情報セキュリティEXPO」は例外と断言できるほどの盛況ぶりをみせた。来場者登録数は昨年開催時に比べほぼ3倍にも達し、9万人を超えた。ユーザー企業のセキュリティ対策への関心は依然根強い。しかし、情報漏えい対策、コンプライアンス(法令遵守)、内部統制という今のキーワードをうたうのはどのベンダーも同じ。イベントを通しても、プロモーションが似通っており、各社の製品・サービスの強みや特徴が分かりにくい印象を少なからず持った。ニーズが高い分野だけに参入企業も増えている。そのなかから、どのように製品の特色を訴求できるかが、勝ち組、負け組を決することになるだろう。
【記者の眼】・メールセキュリティと検疫ソリューションが旬の商材に
・ユーザー企業の情報漏えい対策はまだ万全とはいえない
・どの分野でも類似製品が多い。唯一の特徴をどう打ち出すかがカギ
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| 出展企業の感触は? | 出展企業に、今回のイベントの感触を聞いてみると、手応えを感じている担当者がやはり多かった。今年で3回目を迎えるが、「毎年ビジネスチャンスにつながる機会が増えている」と、熊平製作所など3回連続で出展する企業は口を揃えていた。 情報セキュリティという旬の分野だからユーザー企業の関心が高く、参加者数が増えているのは確か。だが、理由はそれだけではないようだ。IT系の大きな総合イベントの集客力が下がってきたという声が多いなか、盛況なのはセキュリティに特化しているからだとみられている。 |  | 「ユーザー企業のイベント参加者の目的は明確で、セキュリティ商品を真剣に探しにきている人しかいない。“冷やかし”参加者がいないから、商談も進みやすく、ビジネスにつながる確率も高い」と、ある出展企業は話す。 総合イベントより規模は小さくても、着実に案件につながる分野特化型のイベントの方が実際のビジネスにつながりやすいとみて、人気を集め始めている。ITベンダーのイベントへの出展計画も徐々に変わりつつあるようだ。 | | | |