中・小規模病院での導入は必至
医療制度改革が需要喚起の起爆剤に
中小規模の病院向けITマーケットが活気を帯びそうだ。政府は、医療機関のIT化に向けて、2011年度からレセプトのオンライン化を義務づける方針を示し、医療現場のIT化が本格的に進む見通しとなってきた。一方、診療報酬の引き下げにより医療機関の収入は減っている。業務の効率化によるコスト削減が不可欠で、IT化は急務の状況だ。これまで一部の大病院だけに限られていたIT化が、中・小規模の病院にも広がっていくのは必至となろう。(木村剛士●取材/文)
■診療報酬減でIT化は待ったなし 医療機関は現在診療所を含めれば、日本全国でおよそ10万6000か所ある。そのほとんどが診療所で、全体の約9割を占める。一般的に大規模病院に位置づけられる300床以上の病院は1600か所程度で全体のわずか1.5%ほど。20床から299床の中・小規模の病院が約7500か所となっている。
医療機関への情報システムの導入は立ち後れが目立っている。電子カルテシステムの導入は、2005年度末の段階で約500病院しかない。しかも、その大半が300床以上の大規模病院で、中規模以下では、ITに対してよほど先進的な病院でない限り導入はされていない。電子カルテシステムだけでなく、業務の効率化を支援するための医療総合情報システムを導入するのも中規模以下の病院では極めてまれだ。
政府は、規模を問わず医療機関に対して「レセプト(診療報酬明細書)システム」オンライン化を義務づけたり、「電子カルテシステム」の導入を推進するなど、医療機関のIT化を推進している。一方で、医療機関の診療報酬は、今年度から従来に比べて3.16%引き下げられ、医療機関の財政状況は厳しくなった。収入(診療報酬)が減るとなると、コスト削減に本気で取り組まなければ生き残りが難しくなる。
「医療機関は、もはや規模の大小にかかわらず、IT導入による業務の効率化を求められている」と、医療機関向けビジネスを強化し始めた日本ビジネスコンピューター(JBCC)の赤坂喜好・取締役執行役員医療ソリューション事業部長は指摘する。「とくに100-300床の中規模病院のマーケットが狙い目。大規模病院は大手コンピュータメーカーの牙城で、そのマーケットに挑戦しても勝算はない。中・小規模の病院は大手があまり入ってきていない市場。情報システムのニーズが乏しい小規模の診療所を除けば、中規模病院がもっとも需要が見込める」。
政府の方針と過去最大の変動幅となる診療報酬の引き下げにより、中規模の病院が、IT導入に本気で動くというわけだ。レセプトシステムの買い替え、電子カルテシステムと医療総合情報システムの本格的な導入が見込めるはずと赤坂取締役は期待を寄せる。
■顧客開拓に独自の戦略展開 JBCCは、この市場環境を受け、今年4月に医療機関向けビジネスの専門部署を設置。これまで売上高10億円弱の実績だったが、09年度には100億円規模にまで成長させる計画を打ち出した。
単独の事業展開では限界があると判断して、04年10月には、医療機関向けにITビジネスを手がける企業とコンソーシアム「JBHCコンソーシアム」を設立。事実上、その第一弾製品となる電子カルテと医事会計の統合パッケージが、10月下旬には登場する。今月20日のコンソーシアム主催の医療機関向けセミナーで初披露し、営業展開を活発化させる計画だ。
JBCCだけでなく、医療向けビジネスで実績の高い日本事務器(NJC)も「今の市場環境をチャンスと感じている」(医療福祉事業推進本部)と力を入れる。NJCはこれまで医療機関向けに約1000件のシステム構築を手がけた実績がある。自社開発のパッケージソフトを揃えているほか、子会社の「メディカル情報サービス」で医療機関に特化した運用サービスや保守メンテナンスサービスも手がける。システム構築から運用、保守まで一貫して提供できることが同社の強みだ。
今年7月には、メディカル情報サービスが運営するコールセンターサービスの対応分野を拡充。これまでNJCのパッケージとNECの医事システム向けに行ってきた年中無休の問い合わせサービスを、今年度中にNECの医療総合システムにも適用する。さらに来年度には、シーエスアイ、マルマンコンピュータサービスの医療機関向けパッケージにも対応する。取り扱うシステムの幅を広げることで、医療機関向けコールセンタービジネスの拡大を図る方針だ。
IT化の遅れが指摘されてきた医療機関化だが、大規模病院だけでなく中堅以下の規模にもすそ野が広がりそう。「競争激化で価格下落も始まっている」(NJC)というが、未開拓のマーケットだった中・小規模の医療機関にビジネスの鉱脈が眠っている。
 |
| 診療報酬制度改正、診療所にもビジネスチャンス!? | 情報システム導入のメリットが少ないといわれる診療所向け市場にも、診療報酬制度改正は特需を生みそうだ。今年4月に示された診療報酬制度の改正では、領収証に医療費の内訳を明記することが義務づけられた。歯科、調剤、医院のすべてが対象で、9月末までに対応しなければならない。 特需を生みそうなのはレジスタ。コスト面から情報システムは導入できないが、領収証に医療費の内訳を記入できるレジスタで |  | まずは対応しようとする診療所が多いとみて、レジスタを開発するメーカーは特需を期待している。シャープでは、「9─10月が商戦の山場」と意気込みをみせている。 シャープは、既存のレジスタにソフトウェアをインストールすることで、医療費の内訳をレシートに記入できるサービスを開始。このほか、カシオ計算機なども医療費の内訳記入対応のレジスタを投入し始めている。診療所レベルでもビジネスチャンスを期待して、メーカーはにわかに動き始めている。 | | | |