中堅・中小企業(SMB)市場でKVMスイッチ拡販のチャンスが出てきた。インターネット経由でサーバーを運用管理できるデジタルKVMスイッチの登場で、大企業だけでなくSMBでもKVMスイッチのニーズが急激に高まっているためだ。関連メーカー各社は、新製品の発売や新サービスの提供、販売代理店の開拓などで事業強化に着手しはじめた。SMB向けKVMスイッチ市場は立ち上がったばかりであることから、各社とも新規顧客の開拓に躍起になっている。
サーバー遠隔管理ニーズ高まる
ケーブルを含めたKVM切替器のコンシューマ市場でトップシェアを持つコレガは今年8月、SMBを対象とする「CG-IPKVMR」を発売し、法人向けKVMスイッチ市場に参入した。インターネット経由でパソコンを管理できることに加え、同社のパソコン切替器と組み合わせることで複数台のサーバーを一括して遠隔操作できることが特徴。古田竜夫・営業本部長は、「製品の機能を生かし“サーバーソリューション”を実現する製品として法人に訴えていく」としており、システム構成図や接続方法などを記載したカタログの作成や、サイトによる情報提供の拡充を図っている。まずは「当社のKVM切替器は法人も対象であることを訴える」考えで、近くコンシューマとSMBを対象とした製品を10モデル発売する予定。今年度(2006年12月期)の売り上げは、出荷金額で前年度比25%増、約7億円を目指す。
KVMスイッチメーカー大手のアボセントジャパンは、データセンターとの協業でSMBの顧客開拓を推し進める。小林俊彦社長は、「社内システムをデータセンターにアウトソーシングする機運は、SMBでも高まっている。データセンターがハウジングやホスティングでリモート管理機能を付加価値サービスとして提供するためにKVMスイッチを活用しており、当社にとっては製品の拡販につながっている」という。今年9月初旬の時点で5社程度のデータセンターと協業。「こうしたアライアンスが原動力となって、今年度(06年12月期)の総売上高は3倍に増える」と試算する。
日本ラリタン・コンピュータでも、SMBを対象としたKVMスイッチの拡販を急ぐ。「SMBに強い販売代理店の取り込みに力を注ぐ」(杉山春彦・セールズ&マーケティング統括部長)としており、今年に入ってから代理店の営業支援を専門的に行う組織「販社グループ」を新設した。現状で5社の販売代理店を「1年以内に2倍に増やす」方針だ。これにより、今年度(06年12月期)はデジタルKVMスイッチの売り上げで前年度の2倍以上を狙う計画。「全社売り上げを前年度比20%増に引き上げる」としている。
ATENジャパンでも、販売代理店とのパートナーシップを深めることでSMB向け事業を成長軌道に乗せる方針だ。「デジタルKVMスイッチを拡販するため、販売代理店であるSIerに対してリモート管理ソリューションの提供に向けた技術トレーニングを実施している」(ジョヴィ・チャン・営業推進部次長)という。販売代理店のスキル向上で、今年度(06年12月期)はSMB事業で2ケタの売上増を目指す。
KVMスイッチの用途は、これまでサーバールームでのサーバー管理対応が主流だったため、大企業が購入し、多くのサーバーを統合管理するケースが多かった。ところが最近は、情報漏えい防止などセキュリティや、システム運用管理者の業務効率化によるコスト削減の観点から、大企業やSMBの区別なく“サーバールームの無人化”を徹底する傾向が強まっている。リモートでサーバー管理が可能なデジタルKVMスイッチの導入に関心が集まっており、これまでKVMスイッチの導入が少なかったSMB市場で需要に結びつく可能性が出てきた。そのため、KVMスイッチメーカーはSMBを新規顧客として獲得することが売り上げを一気に引き上げる推進力と判断し、各社それぞれの施策でSMB向け事業を拡大しているというわけだ。