その他
情報産業、生産性に1.6倍の差-IPAの情報処理産業経営実態調査にみる-
2006/12/11 14:53
週刊BCN 2006年12月11日vol.1166掲載
イノベーションが勝ち残りのカギになる。自社開発ソフトやパッケージソフト、オープンソースソフト(OSS)など先進技術を結集したソフトウェアプロダクトを積極的に活用しているソフト開発ベンダーは、そうでないベンダーに比べて労働生産性が6割近く高い。情報処理推進機構(IPA、藤原武平太理事長)が11月29日に発表した情報処理産業経営実態調査で浮き彫りになった。
イノベーションで勝ち残れ
■売り上げに結びつかず
IPAによれば2003-05年度の3年間の情報処理産業の売上高は3年連続で増加。06年度以降も拡大を続ける可能性が高いと見る。しかし、伸び率でみると03-04年度が前年度比3%近く伸びたのに対して05年度は0.8%増に鈍化した。
受注はおおむね好調だが、「人手不足でソフトの開発が追いつかない」(IPAの小林敏章参事)ことが伸び率低下の主な原因だと分析する。受注量の増大に人材の手当てが間に合わず、売り上げ計上が先送りになっているというのだ。
大手SIer幹部は「今年度も人手不足の状況には変わりない。07年度以降、改善の効果が数字に現れてくるのではないか」とみている。ここ数年の人材拡充や生産性向上の努力の成果は、来年度以降に持ち越されることもあり得るというのだ。
人手不足は残業時間の多さにも現れた。全産業の05年度の年間残業時間は125時間であるのに対して情報サービス産業は2倍強の263時間と格段に多い。数字に現れてこないサービス残業があることも推測されることから「実際の残業数はさらに多くなる」(調査を監修した東京大学の元橋一之・工学系研究科技術経営戦略専攻教授)と指摘する声も。残業が慢性化している実態が浮かび上がる。
■生産性向上で乗り切れ
こうしたなか、自社開発ソフトやパッケージソフト、OSSなどソフトウェアプロダクトを積極的に活用することで労働生産性を高め、人手不足を補う取り組みが注目を集めている。イノベーションによって生産性を高めたベンダーがより多くの受注をこなして売り上げに結びつける。理論上は残業数も減らせるはずだ。
今回の調査で、受託ソフトの開発が売上高の半分以上を占めるソフト開発ベンダーの労働生産性は1時間あたり4029円だったのに対して、ソフトプロダクトの開発・販売が売上高の半分以上を占めるベンダーは6335円と1.6倍近く高いことが明らかになった。労働生産性とは売上高から原材料費などを除いた付加価値を労働投入量(労働時間×労働者数)で割った数だ。
ソフトプロダクトをベースにすれば開発や納入にかかる人手は大幅に軽減されて生産性が高まる。仮に顧客の要求仕様に合わせるためのカスタマイズ(手直し)が発生したとしても、ゼロから手づくりするよりは格段に効率のよいことが改めて証明された。
ソフト開発における下請け構造の下の階層に甘んじるベンダーはSE・プログラマの1か月の費用を示す人月ベースで見積もりを出すことが多い。人手を減らすと売り上げが減るため「プロダクトの積極活用やイノベーションを起こす動機づけが弱い層」(元橋教授)である。海外オフショア開発の拡大など国際競争が激化するなかで人月単価のアップも容易ではない。
IT投資が拡大基調にある今こそ最新技術を集結したプロダクトで勝負するイノベーション型のベンダーへ転換するチャンスである。
【チャンスの芽】
・IT投資は依然として拡大基調にある。
・イノベーションは生産性を高める原動力。
・国際競争に勝つビジネスモデル構築を急げ。
イノベーションが勝ち残りのカギになる。自社開発ソフトやパッケージソフト、オープンソースソフト(OSS)など先進技術を結集したソフトウェアプロダクトを積極的に活用しているソフト開発ベンダーは、そうでないベンダーに比べて労働生産性が6割近く高い。情報処理推進機構(IPA、藤原武平太理事長)が11月29日に発表した情報処理産業経営実態調査で浮き彫りになった。
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