その他
北東アジアOSS推進フォーラム 日中韓の共同開発がスタート
2006/12/11 14:53
週刊BCN 2006年12月11日vol.1166掲載
日中韓3国の産官学が共同してオープンソースソフトウェア(OSS)の普及方法を探る第5回北東アジアOSS推進フォーラム(NEAOPF)が11月21日から2日間、福岡市で開催された。今回の福岡会合ではOSSをエンタープライズ・システムに適用するための基盤技術の共同開発やデスクトップでの利用拡大を目指すプロトタイプの開発など、いくつかの具体的なプロジェクトが議長声明に盛り込まれた。(佃 均●取材/文)
リソース管理や互換性検証など
■人材育成カリキュラムも共同で
NEAOPFは2004年4月に中国の北京で第1回が開催され、以降日本、韓国、中国の各国持ち回りで計4回開かれている。今回は日本の主催で、3か国のOSS関係者約300人が参加した。議長声明に盛り込まれたワーキンググループ(WG)ごとの新規プロジェクトは、
(1)オープンスタンダードに基づくLinuxシステム向け分散リソース管理技術・環境「Open RIM」の開発
(2)Linuxカーネルの新旧バージョン間互換性テストツール「Crackerjack」の開発
(3)データベース管理システム(DBMS)の性能評価
(4)OSSデスクトップLinux導入促進ロードマップの策定(以上、技術開発・評価WG)
(5)OSSモデルカリキュラムとコースウエア「北東アジアOSS人材育成カリキュラム」の共同開発(人材育成WG)
──などである。
OSSはソースコードが開示されるライセンス・フリーのプログラムで、情報システムの透明性が高く、特定メーカー依存から脱却できると注目されている。
ところが、ソースコードが公開されているために多様なバージョンが提供され、システムコールの互換性やソフトウェア間の親和性、連携性を第三者が確認し、必要に応じてユーザーに情報を提供していく体制が欠かせない。また大規模な業務処理システムに適用するには、管理機能が十分でないと指摘されている。
「Open RIM」や「Crackerjack」はその一環となるもので、リソースリザベーションやシステムコール、メッセージマニュアルなどが対象となる。またDBMSの性能評価では、MySQLとPostgreSQLを対象とし、日本の情報処理推進機構(IPA)が開発したオープンソース情報データベース「OSS iPedia」を適用する。
■焦点はデスクトップ
OSSデスクトップLinux導入促進ロードマップは、期待されながら普及が進んでいないデスクトップや情報端末の分野について、来年1月末までに利用が広がらない要因を探り、各国の調査に基づいて対応策を練ったうえでロードマップ草案の第1版を完成させるとしている。
調査とロードマップ策定と並行して、「少なくとも3種類の専用端末向けLinuxデスクトップの候補を決める」(桑原洋・日本OSS推進フォーラム代表幹事)計画だ。具体的には中国と韓国が両国の政府仕様のLinux「RPLinux」(中国)と「Booyo」(韓国)に基づいて、評価用試作機を開発、日本がその成果を評価する。
デスクトップ部会長の矢野広一氏(ターボリナックス ジャパン社長)は「3種類の端末については今後、3カ国間で詰める」としているが、各国の関心と実績を基準とすれば、日本がシンクライアント、韓国がPOSシステム、中国がオンライン発券端末に落ち着くと見られる。
【解説】
NEAOPFは日本のOSS推進フォーラムが中国、韓国に呼びかけてスタートした。北京、札幌、ソウルまでの3回は3か国に温度差があり、お互いの状況と立ち位置の確認が中心で、なかなか具体的な共同開発プロジェクトがまとまらなかった。
日本は政府のIT国家戦略で公共機関の情報システムにOSSを積極的に採用する方針を固めていたが、例えば中国はOSSを「脱マイクロソフト」戦略の中核に据え、韓国は「ポストIMFのIT戦略」に位置づけていた。このためNEAOPFでは、OSSをめぐる次期IT基盤の主導権争いという側面がなかったとはいえない。
またLinux標準をめぐって中国は紅旗(レッドフラッグ)版Linuxを推奨、札幌会合で標準化草案を提示するなど強硬姿勢を示し、韓国は早期の具体的プロジェクト実現を要求した。このため札幌会合では3か国の間に不協和音が生じる局面もあったとされる。 民間レベルで日本のミラクル・リナックス、中国のレッドフラッグ、韓国のハンソフトの3社が共通仕様「Asianux」で合意し、統一Linux仕様の有力候補に浮上した。ところが天津会合までの間に、中国は政府独自のRPLinuxを、韓国は政府系技術開発機関のETRIが開発したBooyoをそれぞれ提唱するなど、状況に大きな変化が起こっている。
今回、デスクトップLinuxのプロトタイプ開発で中国と韓国はRPLinuxとBooyoの仕様統一で合意したが、日本は静観の姿勢を明示、両国の成果を評価する立場にとどまった。Asianux陣営が実績をあげ始めていること、市場シェアの大きな米レッドハット版Linuxや欧州連合(EU)の動静を考慮したと考えることができる。
中・韓両国とも表立って言明していないものの、日本の産業力と市場規模に期待を寄せていることは間違いない。先にIPAのOSSセンターがドイツのフランフォーファー・フォーカス研究所と提携するなど、日本は中・韓両国の思惑を配慮しつつ米欧の動きも視野に入れ、独自のOSS普及策を推進することになる。
日中韓3国の産官学が共同してオープンソースソフトウェア(OSS)の普及方法を探る第5回北東アジアOSS推進フォーラム(NEAOPF)が11月21日から2日間、福岡市で開催された。今回の福岡会合ではOSSをエンタープライズ・システムに適用するための基盤技術の共同開発やデスクトップでの利用拡大を目指すプロトタイプの開発など、いくつかの具体的なプロジェクトが議長声明に盛り込まれた。(佃 均●取材/文)
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