その他
内部統制 公表遅れた実施基準案 対象企業に混乱招くか
2006/12/11 14:53
週刊BCN 2006年12月11日vol.1166掲載
内部統制で大混乱!?──。金融庁は11月21日、内部統制構築のための「実施基準(ガイドライン)」案を公表した。対象企業の具体的対応がいよいよ始まることになる。ただ、この実施基準案の内容、業界関係者からは「予測よりも適用範囲が広がって複雑。混乱を巻き起こしかねない」との意見が出ている。また、対象企業の内部統制支援を手がけるコンサルタントと公認会計士が極度に不足しているのも問題視され始めた。内部統制の確立を求める「金融商品取引法」の適用は、2008年4月1日から始まる会計年度から。対応するための期間が短いこともマイナス要因となり、対象企業は混乱をきたしそうな様相を呈している。
「対応期間」「支援者」不足と「適用範囲」の拡大が要因に
金融庁は11月20日、実施基準を作成する「企業会計審議会内部統制部会」の第15回を開催。翌日に「実施基準(ガイドライン)」案を一般公開した。現在、パブリックコメントにかけている最中で、12月20日まで意見を募った後、「年明けに正式版を公開する予定」(金融庁)。実施基準案をベースに対応策を練るつもりだった多くの対象企業にとっては、「いよいよ」というより「ようやく」公表されたとの印象だ。
ある大手コンサルティング会社の内部統制コンサルタントは、このタイミングでの公表についてこう解説する。「これまでガイドライン待ちで静観状態だった多くの内部統制担当者たちは、ようやく現状を見つめ始めた。時間的に余裕がないことにも気づき始め、焦りを感じている」。
3月期の企業であれば、08年4月1日からの事業年度から対応しなければならなくなり、残された期間はあと1年4か月ほどしかない。企業規模や事業内容によって対応に要する期間は異なるが、十分な準備期間があるとは決していえない。企業の会計監査に詳しく内部統制コンサルティングサービスを手がけるアビームコンサルティングの永井孝一郎・EBS事業部プリンシパルは、「新興市場に上場する企業は時間的にかなり厳しいだろう」とみる。米SOX法に対応する日立製作所の八木敬之・経営戦略室部長代理は、「日立は少なくとも2年はかかった」と苦労話を交えて対応の大変さを語る。
時間的な厳しさだけではない。適用範囲の拡大も企業の焦りを煽る。今回の実施基準案では、当初の予測よりも対象範囲が広がった部分がある。決算・財務報告にかかわる業務プロセス評価については、上場企業本体および子会社だけでなく、持分法適用会社と事業委託(アウトソーシング)先も適用範囲内になったこと。決算・財務報告以外の業務プロセスでも、事業目的に大きく関係する勘定科目(売上高、売掛金、棚卸資産)にかかわる業務プロセスは原則すべてが対象になる。そのほかにも適用範囲が広がったり、不透明な部分もある。対象範囲が広がって複雑になれば、当然ながら業務量も増えて時間がかかる。
実施基準の発表の遅れと内容が企業に焦りをもたらすなか、追い打ちをかけるのが、公認会計士と内部統制の確立を支援するためのコンサルタントが不足していることだ。
現在、公認会計士は日本に約1万7000人。内部統制に精通したコンサルタントは「1000人程度しかいない」(永井プリンシパル)。公認会計士は通常の会計監査業務で手一杯、内部統制の構築支援を十分にできないという声がある。一方、上場企業は約3800社で、連結子会社と関連会社を加えれば約5万社になる。自ら対応できる企業は別だが、コンサルタントや公認会計士を活用して対応しようと考えている企業のニーズに応えられる状況ではないのだ。日立では、内部統制コンサルティングサービスを手がけているが、案件急増のために新規コンサルティングの依頼を受けることができない状況。コンサルタントのノウハウを有効活用してビジネスに結び付けようと、集合型の研修サービスやeラーニングサービスを始めた。
時間不足、支援者不足、そして適用範囲の広さと複雑さ。この3つが要因となり、対象企業が内部統制確立で混乱するケースが出てくる恐れがある。対象企業の多くは、まずは上流工程といえる文書化などの対応に追われ、内部統制確立のためのIT統制関連のビジネスが動き始めるのは、予想以上に遅れてしまうかもしれない。
内部統制で大混乱!?──。金融庁は11月21日、内部統制構築のための「実施基準(ガイドライン)」案を公表した。対象企業の具体的対応がいよいよ始まることになる。ただ、この実施基準案の内容、業界関係者からは「予測よりも適用範囲が広がって複雑。混乱を巻き起こしかねない」との意見が出ている。また、対象企業の内部統制支援を手がけるコンサルタントと公認会計士が極度に不足しているのも問題視され始めた。内部統制の確立を求める「金融商品取引法」の適用は、2008年4月1日から始まる会計年度から。対応するための期間が短いこともマイナス要因となり、対象企業は混乱をきたしそうな様相を呈している。
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