昨年8月に国内の主要ISVで結成した「メイド・イン・ジャパン・ソフトウェア(MIJS)コンソーシアム」が、各ソフト同士の連携強化に向けて具体的な作業に乗り出した。加盟会社による「技術部会」を中心に、今春までにMIJS規格の「標準マスター」などを開発する。2月にはソフト連携に必要な各ソフトのアダプタ、マスターやトランザクションの連携機能などの骨子をMIJSカンファレンスで公表する計画だ。業務フロー連携では、オラクルやIBMなどが提唱するSOA(サービス指向アーキテクチャ)基盤「BPEL」の採用も検討する。これに合わせて、日本オラクルと東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)が昨年11月に9社のISVと組織した「CONTROL2006」もMIJSとの統合に向けて動き出した。マスターやソフトウェア基盤を共通化した大規模なソフト連携が現実味を帯びてきた。
ソフト連携にISVが大同団結
業界初の「標準マスター」作成も
MIJSは当初、サイボウズやソフトブレーンなど国内の各分野でトップクラスのシェアをもつ13社で発足した。昨年11月に弥生が加盟し、現在18社が参加している。会員が結束して「日本発のソフト」を中国などの海外に進出させることを狙う。また、ユーザーの利便性を高めるため、「ソフト同士の連携」の強化も目的としている。ソフト連携に関しては「技術部会」(部会長=梅田弘之・システムインテグレータ社長)を組織し、連携に必要な仕様を決める。
具体的には、各ISVのソフト別に連携用アダプタを作成し、MIJS参加企業であるアプレッソのデータ連携ツール「DataSpider」でデータの相互連携をはかる。これにより、各ソフトが個別にもつマスター間での「マスター連携」が可能になる。また、会計ソフトの仕訳データと販売管理データなどの「トランザクション連携」ができるようになる。
最終的には、どのソフト同士でも簡単に連携できるMIJS規格の「MIJS標準マスター」も開発する計画。部会長の梅田社長は「どのソフトでも連携できる業界初の標準的な共通マスターが完成すれば、新たなISVの参加を促すことができる」と意欲を示す。さらに、同部会では、BI(ビジネスインテリジェンス)や帳票作成、与信管理、検索機能などをコンポーネント化し、各ソフトで共通して利用するためのインターフェースを開発する計画だ。
こうしたMIJSの動きに、同じくアプリケーション連携をめざす企業連合の「CONTROL 2006」が同調する動きを示している。
CONTROL2006は、昨年11月に日本オラクルとB-EN-Gが、エス・エス・ジェイ(SSJ)や日立ソフトエンジニアリングなど9社の国内ISVと結成した組織。企業の「内部統制」対応を推進するため、オラクルのSOA基盤「Oracle BPEL Process Manager(BPEL)」を中軸に、API(アプリケーション・プログラム・インターフェース)を実装したアプリケーションをアドオンすることで、テーブルスキーマに手を加えずに、各ソフトを連携できる仕組みを構築している。
「BPEL」で外資系が参画
MIJSとCONTROL2006は、相互に関心を示し、事務レベルで「BPEL」をMIJSの連携機能に加える協議を進めてきた。日本オラクルの遠藤哲・ISV推進部ディレクターは「MIJS加盟のアプレッソのデータ連携ツール『DataSpider』と『BPEL』が競合するとの見方があるが、前者はデータ連携として、後者は業務フロー連携としてすみ分けができる」と、MIJSに積極的に参画していく方針だ。
MIJS技術部会長の梅田社長も、「MIJSは国産ベンダーの連合だが、勝負するのは業務アプリケーション。ミドルウェア領域は外資系ベンダーの汎用製品を使うことに問題はない」と、日本オラクルのほか、日本BEAシステムズなどにも参加を呼びかける。
すでに、MIJSとCONTROL2006の参加ISVのうち、4社が両団体に共通加盟している。これまで、ベンダーが異なるソフトの連携については、多額の開発コストや長期の開発期間が必要とされてきた。しかし、両団体が協力することで、ソフト連携に向けた「大同団結」が実現することになる。MIJSは、連携機能を開発した段階で、CONTROL2006に加盟するISVに向けて参加を募るほか、サービス型ソフト提供「SaaS(Software as a Service)」ベースの「MIJSポータル」を構築して、従量課金制で参加ISVのソフトを利用できる環境を整備するという新たなプランも検討している。