サン・マイクロシステムズ(末次朝彦社長)は、ディストリビューション体制を拡充する。日本ヒューレット・パッカード(日本HP)や日本IBMなどが複数のディストリビューションチャネルを持つのに対して、サンはごく限られたチャネルしかなかった。得意とするUNIXサーバーなどハイエンド製品なら従来のチャネルでも対応できたが、ここ数年で品揃えを増やしてきた比較的ローエンドのPCサーバーのシェアを拡大させるには、量販系のディストリビューションチャネルの整備が不可欠。競合が激しいPCサーバーでいかに販路を開拓するかが課題になっている。(安藤章司●取材/文)
流通体制の拡充を推進
競合激しく開拓に課題も
■ディストリ強化が課題 サーバーメーカーにとって流通網の整備はシェア拡大に欠かせない要素である。UNIX系のハイエンドサーバーを得意としてきたサン・マイクロシステムズは、量販系のディストリビューションチャネルが弱いことがかねてから指摘されていた。
価格性能比で優れるPCサーバーの出荷台数が世界規模で拡大するのに伴い、サンでもここ数年は比較的ローエンドのPCサーバーの品揃えを拡充してきている。しかし、ディストリビューション網の弱さがシェア拡大の大きな足かせになってきたことは否めない。
こうした課題を解決するため、同社は国内ディストリビューション網を整備する。チャネル開拓を進めるディストリビューションパートナーの強化である。
シェア拡大には、売れ筋の商品を短い納期で効率よく流通させる仕組みが求められる。ディストリビューションパートナーはサン製品の在庫を持ち、SIerなど販売会社の必要なときに、必要なだけ商品を供給する役割を担う。また、あらかじめ出荷前の動作チェックを行い、OSや顧客のオーダーに従って周辺機器も組み付けて出荷する。これにより販売会社の負担を軽減し、サン製品をより多く扱ってもらうのが狙いだ。
PCサーバーで上位シェアを占めるNECや富士通といった国産ベンダーはもちろんのこと、日本HPや日本IBMなど海外ベンダーはいずれもディストリビュータ大手のダイワボウ情報システムや大塚商会などと太いパイプを持ち、一部ではパートナーなどと組んで独自の流通チャネルを構築しているほどだ。
■CTCのグーデスと組む サンは長年結びつきが強い伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の協力を得て、2005年半ばからサン製品専門のディストリビューション体制をつくってきた。CTC社内にサン製品のみを扱うディストリビューション部門を設けたもので、06年にはサービスブランドを「Goodes(グーデス)」と名づけた。ただ、ダイワボウや大塚商会に比べてグーデスの知名度は高いとはいえず、CTC自身も積極的にPRしていないフシがある。
グーデスは出荷前の動作チェックや周辺機器の組み込み、OSのインストールなどの付加価値を提供するとともに、特定商品について適正な在庫を持つことで納期短縮に努めてきた。
とはいえ、グーデスだけではサンのサーバーをシェア上位に食い込ませるだけのパワーがあるわけではない。この点はグーデスもよく理解しており、当面は有力大手SIerとのパイプを太くすることに軸足を置く。大手SIerは複数メーカーのサーバーを取り扱うことが多く、「サン製品をより多く販売してもらえるよう営業を強化する」(CTCの浦川隆・パートナーディストリビューションセンター長)方針だ。
一方、サンとしては「自社製品の拡販に努めたい」(桜場良幸・執行役員パートナー営業統括本部長)と考えるのが本音。ダウンサイジングの流れのなかで、サンが得意とするUNIXサーバーの一部が他社のPCサーバーに置き換えられてきた経緯があるだけに、今は自社サーバーによって失地回復を図ることが最大の課題。そこで出てきたのが、グーデスでカバーしきれていない領域にリーチできる流通体制の拡充の検討である。
■CDP拡張でリーチ広げる サンの販売チャネルには、自社営業部門による直販と、富士通などメーカーなどに対する製品供給、そしてディストリビュータを経由して広くSIerに流通させる3つがある。
実際には営業部門が直販するケースは少なく「物流のほぼ9割が間接販売」(桜場本部長)という。主流はメーカーなどに向けた製品供給とディストリビュータ経由であり、現時点でサンとディストリビューション契約を結んでいるのはCTCのグーデスのみである。この契約は「チャネルディベロップメントプロバイダ(CDP)」と呼ばれている。
一部例外はあるものの、一般のSIerは基本的には国内唯一のCDPであるグーデスを経由してサン製品を仕入れる。グーデスは過去約2年間の経験から、チャネルの上流に位置する有力パートナーとの結びつきを強めるほうが「シェア拡大に有利に働く」(浦川センター長)とみており、CDPを通じて少しでも多くのパートナーにリーチしたいと考えるサンの考え方と微妙なズレもうかがえる。
サンにとってグーデスは「極めて有効に機能しており、欠かせない存在」(桜場本部長)であることには変わりない。だが、シェア拡大を急ピッチで進めたいサンとしては、CDP機能のさらなる拡充が必要であることも事実。今後はたとえば地域や特定の中小SIerに限定するなどグーデスと競合しない範囲で、CDP機能を拡充することも視野に入れるものとみられる。
パートナー経由での販売を主軸とするサンにとって、ディストリビューション体制をどれだけ強化できるかがシェア拡大のカギとなりそうだ。
チャネルディベロップメントプロバイダ(CDP)サン・マイクロシステムズ独自のディストリビューション契約。現在はCTCのグーデスが唯一。他の主なサーバーメーカーは複数社によるディストリビューション体制を組み、相互の適切な競争関係を保つことで販売会社に対するサービス向上を図る傾向がみられる。