その他
セールスフォースとNTT Comが握手!
2008/06/09 14:53
週刊BCN 2008年06月09日vol.1238掲載
VPN経由のSaaS型アプリ提供で協業 法人ユーザー獲得で競争激化へ セールスフォース・ドットコムとNTTコミュニケーションズ(NTT Com)、日本電信電話(NTT)は、NGN(次世代ネットワーク網)上でSaaS型アプリケーションを共同で提供していくというアライアンスを組んだ。7月1日には、VPN経由のSaaSが可能な「Salesforce over VPN powered by NTT communications」を提供開始する。NTTグループの着手で、通信事業者によるSaaS提供がほぼ出揃った。回線サービスで付加価値を追求し、法人ユーザーの獲得競争が激化する。(佐相彰彦●取材/文)■お互いの課題解決を補完 両社のメリットが合致 セールスフォースとNTT Comが共同でSaaS事業を手がけることになったのは、それぞれ両社が掲げる課題の解決に向けてお互いが補完できるとみているためだ。両社は、「メリットが合致した」と口を揃える。 セールスフォースでは、「官公庁での導入ケースを増やしたい」(宇陀栄次社長)考えを示している。元は郵政省だった日本郵政公社が同社のSaaSを導入した実績はあるものの、「企業ユーザーを獲得していくのはもちろんだが、中央省庁や地方自治体の利用を活性化させるという新しいアプリケーションエリアに入り込む」(同)ことで、ビジネス領域を一段と広げていくことを狙いとしている。また、官公庁という新規分野でのユーザー確保にともない、新しいアプリケーションベンダーとのアライアンスなども視野に入れる。 NTT Comにとっては、「回線の効用を引き上げることが最大のポイント」(野村雅行副社長)という。市場としての法人向け回線サービスは成熟しており、単なるネットワークインフラを提供するというだけのビジネスモデルでは他社との差別化につながらない。それに、低価格戦略を打ったところで、利益を圧迫する“消耗戦”に陥るだけだ。 NTTグループでは今年度からNGNを本格稼働させたにもかかわらず、法人向けサービスの中味については従来のネットワーク提供と大差ない。「法人向け事業の拡大には、ネットワークインフラ提供だけではなく、今後はネットワークソリューションが重要となる」(野村副社長)。その考えに基づき、SaaSとVPNを組み合わせたサービス形態を導き出したわけだ。 また、NTT Comは官公庁や大企業などをユーザーとして獲得しているが、半面では「SMB(中堅・中小企業)を対象としたソリューションメニューが少ないのが実情」という。SaaSのユーザー対象としてSMBがメインになるとの見方が強いなか、顧客のすそ野を広げるという狙いもあるようだ。■VPN経由で利用可能は初 世界で類をみない試み 「Salesforce over VPN」は、ユーザー企業がVPN経由で利用可能なことが最大の特徴。これまでのインターネットアクセスが主流というSaaSのサービス形態を大きく覆したことになる。セールスフォースの宇陀社長は、「米国(本社)でも行っていないケース。世界でも類をみない試み」とアピールする。 VPN経由のSaaS利用を可能としたのは、日本企業によるネットワーク構築の現状を踏まえたため。NTT Comの野村副社長は、「従業員100人以上である法人の約90%が企業通信網を構築、そのうち約80%がVPNサービスを利用している。これは、セキュリティを重視しているためだ。VPN普及率が高いという点からも、閉域網でもSaaSが利用できるというサービス形態のほうが需要を掘り起こす可能性が高いと判断した」としている。 ほかにも、NTT Comによるネットワークの常時監視や一元保守への対応といったトータルサポートを用意していることも売り。価格は、ひとつのIDあたり月額8500円から、初期費用として2万円の工事費に設定。販売経路については、ユーザー企業の業種や規模などに応じて両社の販売代理店を最大限に活用するという。 今後の展開については、9月をめどにNTTドコモの携帯電話と連動させることや、今年度中にセールスフォースのデータセンターで保有するDB(データベース)とユーザー企業のデータを紐付けするストレージサービスの提供など事業強化を図る。こうしたビジネスモデルを引っさげて、「セールスフォースを利用する新規ユーザーの50%に対して『Salesforce over VPN』を提供することが初年度の目標」(野村副社長)と力を込める。■主導権を握るのはどこ!? ISVとの連携がカギに KDDIやソフトバンクはNTTグループに先駆けてSaaS関連ビジネスに着手していたことから、今回の発表で国内の大手通信事業者すべてがSaaSサービスを本格化させたことになる。ビジネスモデルに違いはあるが、KDDIとソフトバンクグループは両社ともにモバイルと連携させたサービス提供から始めている。NTTグループは後発とはいえ、他の通信事業者も本格化し始めたばかりであるため、十分に食い込める可能性はある。はたして、SaaSという切り口で主導権を握る通信事業者はどこなのか。 先行するKDDIではアプリケーションサービスの拡充に向けてISVを対象としたパートナープログラムを設置しているものの、アライアンス数が少ないことが課題のようだ。ソフトバンクグループでも、スマートフォンとセールスフォースを組み合わせた展開として販売代理店のSIerが自社アプリケーションもSaaS化して提供することに期待している。NTT Comでも、「アプリケーションベンダーとのパートナーシップがポイント」(野村副社長)としており、新しいパートナープログラムの策定も模索している。 こうした点では、いかにISVをパートナーとして確保できるかが最大のカギといえそうだ。
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