国内IT流通業界における2009年の空模様は「曇り時々雨」と、先行き不安が広がる世界の経済環境を受け、国内にも「厚い雲」がたれこめる悪天候が続きそうだ。週刊BCNが業界67社の経営トップに09年の景気動向を天気に喩えて聞き取り調査し、全体の天気図をこう判断した。ユーザー企業のIT投資は、景気低迷が長引くとの観測や金融機関の「貸し渋り」などの影響で08年10月頃から先送り傾向が強まった。09年はこれを引きずりIT投資の回復は見えていないことから「よくて曇り」悪化すれば「雨」になるという経営トップが目立ち「辛抱の年」になりそうだ。
曇り時々雨
天気好転は景況の回復頼み
米国の「金融不安」に端を発した「世界同時不況」で最も打撃を受けそうなのが
開発系SIerだ。金融関係を中心とした「大型IT投資」が一巡する「2009年問題」に現在の不況によるダブルパンチで「特定サービス産業(特サビ)に深刻な影響が出る」と、経営トップは口を揃える。SaaS/クラウド型の情報サービス事業は底堅いが、現主力の受託ソフトウェア開発は下げ幅が大きいとの観測。09年の特サビ全体では、最大5%程度の売上減もあり得るという見方が大勢を占めている。
開発系SIerと同じく
販売系SIerは、08年10-12月に「新規IT投資抑制」「買い換え時期延期」の憂き目にあっている。単月で前年対比20~30%も売上高が減少したITベンダーの例もある。値引きが激しいハードウェアの販売金額は必然的に下がる。ただ、最近では、自社パッケージソフトの品揃えやコンサルティングサービスなど、利益率の高いサービスへと動き始めていることもあり、ハードの低迷をカバーできる可能性も残されている。
サーバーやPCの販売が低迷する傾向は、
業務ソフトの天気とも符合する。08年の後半に期待した「内部統制」強化に関連するITの買い換え延期など、納期先送りのケースが予想以上に多くなっている。先行してSaaSを展開するITベンダーにしても「実利が得られるのは2010年以降」と、09年については諦め模様だ。ここ数年、成長率が微増にとどまる
プリンタも、サーバー、PC、業務ソフトの動きが鈍い影響を受けそう。さらに、プリンタ機器の販売減だけでなく、印刷頻度を減らす企業が増え、サプライの減少が必至の情勢だ。
まずは基幹システムの再構築が動き、その「後工程」で需要が生まれてくる
ネットワーク系販社には、引き続き「雨」マークがつく。08年は一時、SaaSなどオンデマンドビジネスやNGN(次世代ネットワーク網)に関連する機器需要が伸びる兆しを見せたものの、「世界同時不況」でIT投資を控える企業が増えると憂慮するNIerが多い。とはいえ、明るい材料もある。仮想化環境の提供やIPテレフォニーなどの積極的な提案で、この不況を打開しようとする動きも見られるからだ。
一方、
保守サービスは、元々売上高に保守サービスが占める比率が約50%と高く、「09年もある程度の売り上げは見込める」と見ている。ただ、ここ数年は各社がテコ入れしてきた設計・構築・運用サービスの需要減退は避けられそうにない。
セキュリティはIT市場減速のなかでもコンプライアンスなどに関連する「必要不可欠な投資は減らない」と期待する見方が根強い。
ディストリビュータは「法人市場は暗澹とした状況」とユーザー企業向けビジネスの減速と歩を合わせ期待薄。一方で、コンシューマ市場ではミニPCなどが堅調で、法人市場の穴をカバーできるかどうかにかかっている。
IT・流通業界の分類 天気図では、IT流通業界を次の8業界に分類した。●
システム構築やソフトウェアの受託開発を行う「開発系SIer」●
PCやサーバー、業務アプリケーションなどを含めソリューション販売する 「販売系SIer」
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ネットワーク機器販売とネットワークインテグレーション(NI)を行う「ネットワーク系販社」
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主に保守・メンテナンスを担う「保守サービス」●
ハードウェアとソフトウェアなどの流通卸「ディストリビュータ」●
プリンタやスキャナなどを開発・販売する「プリンタ」●
会計システムやERP(統合基幹業務システム)などを開発・販売する「業務ソフト」●
セキュリティ製品を開発・販売する「セキュリティ」