販社支援策、共同立案へ
日本オラクル(遠藤隆雄社長)は、データウェアハウス(DWH)などに適した大容量データ処理システム「Oracle Exadata」を1月20日に発売した。「オラクルにとって初のハード」という点に焦点が当たりがちだが、日本ヒューレット・パッカード(日本HP、小出伸一社長)との強力な協業体制も見逃せない。米オラクルは米HPからハードを調達、日本ではハード関連の保守業務を日本HPに任せる。販売会社への支援制度を共同立案するところまで日本HPは踏み込む。

「Oracle Exadata」は、DWH構築を検討している企業やバッチ処理の性能に不満を持っているユーザーなどに適したシステム。「10年に1度のテクノロジー変革」と遠藤社長が語る自信作だ。価格はフル機能モデルでおよそ7400万円とかなり高額だが、「潜在需要は強く、全販売台数の約60%は新規と見ている」と、三澤智光常務執行役員は未開拓マーケットの掘り起こしに期待を示す。既存の一般システムに比べて10~100倍の高速処理能力とオープンな設計、システム更新時にソフトウェアのライセンスコストが不要な価格モデルを特徴にしている。
「今日の発表会見で意気込みを示すため、ネクタイは(オラクルカラーの)赤を選んだ。HPとしても積極的にPRしていきたい」──。発売日の記者会見で、日本HPの小出社長はこう挨拶した。メディア露出の少ない小出社長が、他社の発表会見に登場したインパクトは大きい。関係者は「昔(日本IBM時代)からのつき合いが小出社長と遠藤社長の間にあったからこそ実現したのだろう」という。だが、単純な人脈だけが両社の共同会見に至った理由とは言えないだろう。両社の協業関係は単純なハードの提供だけではなく、かなり深い。
米HPは、まずハードをオラクルに提供する。日本では日本HPが顧客企業にシステムを納入し、発生する保守業務を引き受ける。それだけではない。日本オラクルは近日中に「Exadata」を販売するITベンダー向けに販売支援プログラムを作成する。実はこのプログラムも、日本HPと共同作成する予定だ。
販売はあくまで日本オラクルで、販売戦略も日本オラクルが担う。ではHP側はどうか。ある幹部はこう期待を表す。「このアプライアンスの開発・販売では、あくまでHPは“黒子役”。ただ、単純なハード提供と保守代行がこの製品のビジネス領域だとは考えていない。システムを運用する段階では必ず付随するハードやサービスが必要になってくる。それらはオラクルが持たない商品・サービス群であり、当社の出番になる」と。 “黒子役”に徹する日本HPだが、同社のビジネスインパクトもかなりありそうで、同製品により両社の関係もより一層深まることとなる。(木村剛士)