通話やメールなどビジネスコミュニケーションを一つのインタフェースに統合した「ユニファイドコミュニケーション(UC)」関連ビジネスに、拡大の機運が高まっている。世界同時不況で先行き不透明な状況のなか、コスト削減に動く企業が多く、業務効率化や通信費用削減を目的として、UC関連の製品・サービスを積極的に導入する傾向がみえるというのだ。現段階ではその高価格がネックとなり、ユーザーは大企業が中心。製品やサービスの組み合わせを変えることで、近い将来にはSMB(中堅・中小企業)を掘り起こせる可能性を秘めている。
拠点が多い大企業を攻める
出張費の大幅削減を提案
SIとNIの融合ビジネスを進める三井情報は、シスコシステムズのテレプレゼンスシステムを中心にUC関連事業を手がけており、保守業界や製薬業界などの大企業に導入実績がある。「全国に多くの拠点を持つ企業では、社内会議でも本社などの1拠点に集約する必要があり、参加メンバーの出張費が莫大になる。システムの価格が多少高くても、長期的なスパンでROI(投資収益率)が改善できれば導入を検討するという機運がユーザー企業の間に生まれている」と、松下俊行・営業統括本部営業推進室プロダクト企画グループマネージャーは語る。
日本ユニシスグループでは、ユニアデックスとネットマークスの連携強化でUC事業の拡大を図っている。シスコシステムズ製品ベースのネットワーク構築で国内屈指の実力を持つといわれるネットマークスと、マイクロソフト製品を中心としたシステム導入で定評のあるユニアデックスがタッグを組み、コンサルティングからシステム構築、ネットワーク運用までの総合サービスを提供する予定だ。なかでも、ネットマークスでは「UCを事業柱の一つに据える」(大橋純社長)としており、まずはIP電話を導入している既存顧客に対して提案する。「多拠点を持つ製造業を中心に案件を獲得している」と自信をみせる。
以前は、UC関連の製品・サービスを提供する際にコミュニケーション向上による企業活動の活発化など、業績伸長に向けた戦略を打ち出せることを挙げるユーザーが一般的だった。しかし、三井情報の出張費削減を訴えた提案、ネットマークスによる多拠点を持つ製造業の開拓などといったベンダーの動きをみると、ユーザー企業増加に向けた今後のポイントはUCの導入がコスト削減につながるとアピールすることにある。
また、ベンダー各社がUC事業拡大に際して力を注ぐのは、ネットワークインフラからアプリケーションを網羅した製品・サービスが提供できることだ。三井情報では、これまで顧客として10社程度を獲得。ユーザー数は少ないものの、「1案件あたり1000万円以上の大きな案件が多い」(三井情報の松下グループマネージャー)ことが特徴となっている。ネットマークスでも、「グループ全体で2009年度(10年3月期)に300億円を目指すなど、当社にとってもビジネスの柱になり得る」(大橋社長)と見通しを語る。
SMB開拓は低価格がカギ
NWインフラのリプレースも
UC関連ビジネスのすそ野を広げるために各社が狙っているのがSMBだ。すでに大企業では、コスト削減を中心にアプリケーションを含めたVoIPサービスの導入によるワークスタイル改善を図ろうとする動きが出ており、「不況下では、SMBでも大企業と同じ意識が芽生える」(三井情報の松下グループマネージャー)とみる。
ただ、課題は機器やソフトウェアなどの価格が高いことだ。そこで、ベンダー各社が進めているのがネットワーク(NW)リプレースとIP電話の導入提案。「低価格スイッチでネットワークを構築し、IP電話で通話料の削減を訴えることが重要」というのが共通認識になっている。
また、「システム構築だけでなく、SaaSなどサービス型モデルによるアプリケーション提供も行う」(ネットマークスの大橋社長)。ユニシスグループでは、SaaS事業の本格的に着手しようとしており、UC関連のSaaS提供も視野に入れているということだ。
ユーザー企業に対してIP電話でコスト削減できるといった提案は、数年前に主流になったことで、今に始まったことではない。しかし、より幅広い範囲を対象とするUC関連へのアプローチという点では、ユーザー企業掘り起こしの一策となる。その活用法が、ベンダーにとって業績アップのカギを握るといえそうだ。