パートナー連携、実を結ぶ
NEC(矢野薫社長)が昨年10月末に提供開始したSaaS基盤サービス「RIACUBE/SP(リアキューブエスピー)」で、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)などとワーキンググループ(WG)を立ち上げた。この基盤から複数の「販売モデル」が生まれ、案件を受注するケースが出ている。従来の「ハードウェア売り」中心の同社パートナー制度では、共同でISV製品を検証し、ISVが個々に販売を展開。だが、SaaS展開では「パートナー同士」が市場開拓の立案や技術・接続検証などを行って「販売モデル」に仕立て、ほかのWGと成功事例を共有する。また、この販売モデルをNECグループ経由で売る「商流」ができつつある。

「RIACUBE/SP」では、パートナー制度「SaaS Business Innovation Program」を設け、同社SaaS基盤のパートナー利用を促進するために共同で製品連携などを検討している。昨夏には同基盤の提供開始に先立ち、具体的なビジネスに落とし込む目的で「分科会」を設けた。既存システムなどとサービスを連携させる「SI+サービス」での提供に加え、サービス間連携を技術検証する「技術分科会」と新たなビジネスを創出する「ビジネス開拓分科会」が相互連携し、製品連携、ターゲット顕在化、売り方などの「商流」を踏まえた検討を行っている。
例えば、ビジネス開拓分科会の一つではNEC製品であるSaaS型購買サービス「PLEOMART/PS」を中心に、パートナーと共同で周辺ソリューションを付加。コンサル企業の間接購買システムなどと関連機能・サービス、SI(システム構築)をトータル・ソリューションとして提供を開始した。WGのメンバーはリアライズ、ウィングアークテクノロジーズなど5社。この「販売モデル」をNEC本社の営業やグループ会社がユーザー企業へ提案。ISVから得た付加機能はオプションとして提案する。
NECの松瀬義則・プロキュアメントサービス部マネージャーは、「現購買サービスで不足する機能を早い段階でパートナーから見つけ、WGを通して『販売モデル』を形作ることができた」と説明する。得意領域をもつパートナーと密に連携することで課題解決を迅速化でき、すでに自動FAXサービス、EDIと組み合わせたソリューションで案件を受注したという。同WGに参加しているウイングアークテクノロジーズは、「ベンダー同士で検証を行い、技術的な後ろ盾があるなかで展開していけるのは、パートナーとしてもメリットのあること」(中野浩士・Dr.Sum事業部 営業部 NEC-Gr.マネージャー)と歓迎している。
同社は、SaaS関連ビジネスで2010年度(2011年3月期)に1200億円の売り上げ規模に到達することを目指す。当初はNECグループが直販で「販売モデル」に基づき「売る」ことになる。グループ以外の系列SIerにも販売できる方式での展開も計画している。(鍋島蓉子)