情報サービス産業協会(JISA、浜口友一会長=NTTデータ取締役相談役)は今年度(2010年3月期)、業界全体で前年度比1割程度の売り上げが減る可能性があるとの見方を示した。今年2月の段階では、今期の下げ幅は数%から最悪5%程度としていた。しかし、業界全体で受注が思うように伸びていないことから、当初の予想以上の落ち込みを覚悟する必要があると警鐘を鳴らす。情報サービス産業の産業規模は約17兆円あり、仮に1割下回れば単純計算で1.7兆円分の市場が吹き飛ぶことになる。

JISA幹部は、過去2度の大型不況の経験と照らし合わせながら対応策を練る。1990年代のバブル経済の崩壊は、情報サービス業界で「約8割の会社が赤字」(神山茂副会長=ジャステック社長)となり、就業者の2割が業界を去った。神山副会長は、「感覚的だが」と前置きしたうえで、「当時は3年続けて1割ずつ産業規模が縮小して、元に戻るまで3年かかった」と回顧。2度目の危機である00年初めのITバブル崩壊では「赤字が2割程度、1.5年下降し、回復に1.5年かかった」と話す。
では、今回の世界同時不況はどうか。浜口友一会長は「正直、分からない」と、いまだ手探りの状態。別の幹部はITバブルと同程度の「1.5年下降し、1.5年かけて回復する“全治3年”の可能性」と、見方は定まっていない。しかし、不況前と不況後では、従来の労働集約的な受託ソフト開発や人材派遣型のビジネスモデルが通用しなくなるという点では、JISA幹部の考えは一致する。
JISAは、今回の不況をきっかけとして、向こう5~10年間で多重下請け構造の是正や、相似形の中小SIerのビジネスが見直されると予測。プライムベンダー(元請け)と役割分担する形で、得意分野に専門特化するベンダーとに分かれる水平分業型の構造への変化するとの見通しを示す。プライムベンダーは顧客や専業ベンダーとコラボレーション(協業)することから、「コラボレーション型ベンダー」へと発展し、下請けはソフトプロダクトやSaaS・運用といったサービスを提供する「ビルディングブロック型ベンダー」へ進化すると分析(図参照)。

浜口会長は「多重下請けより、水平分業のほうが利益の内部留保率が高いのは誰が見ても明らか」と、発注者側から見てもメリットが多いと話す。
90年バブルの崩壊時は、業界の価格秩序も崩壊。1人月20万円を切る破格の低価格を提示せざる得ない業者が多数出た。岡本晋副会長(=ITホールディングス社長)は、「今回はそこまで行き詰まっていない。全般的に自身のビジネスと真摯に向き合っている印象を受ける」と話す。中小ベンダーも「それぞれの生き方を追求する方向に動く」と、改革進展に期待感を示すとともに、業界に冷静な対応を求めた。(安藤章司)