EMCジャパン(諸星俊男社長)が次世代データセンター(DC)向け事業の本格化に乗り出した。ストレージ関連機器メーカーでは他社を先行してFCoE(ファイバー・チャネル・オーバー・イーサネット)スイッチを国内市場に投入。ネットワーク機器メーカーや仮想化ベンダーとの協業強化で大規模な案件の獲得を進める。間接販売で製品・サービスを提供していくとしており、新技術に対応できる有力販社を増やすことが成否のカギを握る。

EMCジャパンがこのたび発売したFCoEスイッチは「EMC Connectrix NEX-5020」。LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)とSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)を統合するネットワークで、複雑化しているサーバーやストレージ、ネットワークなどのインフラがシンプルになるほか、ランニングコストの削減も可能となる。雨堤政昭・マーケティング本部シニア・プロダクト・マーケティング・マネージャは、「インフラ増強を進めているDCを対象に、販売のアプローチをかける」方針を示す。そのなかでも特に、「プライベートクラウドの顧客開拓を行う」としている。
市場に出ているFCoEスイッチとの差異点があるかといえば、EMCならではの特別な機能を搭載しているというわけではない。しかし、ストレージ関連機器メーカーのなかで先行して市場投入している点は大きい。「導入事例を増やすことで、当社に依頼すれば安全で信頼性の高いインフラ環境が整えられることをユーザー企業に対してアピールしていく」という。加えて、FCoEが新しい技術であることからも「ネットワークを構成するうえで、FCoEがいかに効果的かを訴える」としている。
また、同社はネットワーク関連機器メーカー大手のシスコシステムズと、仮想化OSメーカーである子会社のヴィエムウェアとビジョンの共通化で次世代DC向け事業の拡大を図ろうとしている。具体的には、シスコ製ネットワーク機器とヴィエムウェア製仮想化OS、そしてEMC製ストレージとスイッチの技術的な検証を実施し、DCがインフラの増強でクラウド環境を整備できるような準備を進めた。今回の製品を投入したことで、「DCが求めるニーズに応えられる」と自信をみせている。次世代DCインフラ構築の先駆者になることを狙いとする。
すでにメーカー間で術検証を実施したことにより、国内市場でFCoEをベースとしたインフラが広まる可能性がある。しかも、DCの多くは「サーバーやストレージを1拠点に集約するニーズが高まっている。加えて、インフラを集約したDC内で、シンプルで停止しないネットワークの統合化や仮想化を求めている」という。こうしてみると、売りやすい環境が整っていることになる。
しかし、課題はEMCとシスコ、ヴィエムウェアの製品すべてを担ぎ、しかもサーバーとストレージ、ネットワークすべてのインフラを含めた統合化や仮想化を手がけられる販社が数えるほどしかいないということだ。EMCジャパンが描く次世代DC向けビジネスを拡大していくための販社の獲得については、「3社間で検討していきたい」考えを示す。最低でも販社数が2ケタになる必要があるといえそうだ。(佐相彰彦)