SIerやコンピュータメーカーにおけるグリーンITの切り札の一つが、クラウドやSaaS、アウトソーシングなどのサービス商材である。サービス化によって、サーバーやストレージなどの主要なIT機材のデータセンター(DC)集約が進んでいる。一方、SMBでは自社でITインフラを所有する傾向が高まり、有効活用の観点から消電力化を意識し始めている。この特別企画では、DC増強を進めるベンダーと、SMB市場で投入されてきた製品のグリーンIT化の動きを追う。
DCの動き コスト競争力と粗利を重視
データセンター(DC)のグリーンIT対応は、電力消費が少ないIT機材の採用やDC設備そのものの省電力化、ソフトウェアによる最適制御という主に三つの要素から構成される。
NECは、省電力ブレードサーバーの採用や空調の効率化、仮想化ソフトによるリソースの有効活用を柱としたグリーンIT対応を推進する。同社が全国にもつ53か所のDCのうち、向こう2~3年で10か所を環境対応DCへと改装する計画だ。今年10月に竣工する富士通の館林システムセンター(群馬県)の新棟では、建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)の最高ランクに準拠するなど、環境対応DCとしては世界最高レベルとなる見通しである。

ITベンダーにとってDCの効率的な運用は、コスト競争力と粗利率を高める重要な要素となる。大手SIerの日立情報システムズは、2009年3月期までの3年間の累計でDCにかかるコストをおよそ30億円削減した。同社は全国に十数か所のDCを展開しており、従来は個別に運用していた。これをソフトウェア技術によって仮想的に統合し、運用することで効率化。DC運用の人員も同じく3年間の累計で3割近く削減し、他部門に配置転換している。

米国の電力業界では、ITを活用して電力供給を効率化する「スマートグリッド」の取り組みが活発化している。IT業界では、持ち前のITのノウハウを使った“スマートデータセンター”や“スマートクラウド”の構想が持ち上がっており、DCの効率運用の手法は今後、より発展するとみられる。スマートDCでは、例えばITベンダーが保有するDCと、ユーザー企業が保有するDCを統合的に運用し、効率化を図るというアプローチだ。日立情報システムズは、自社で保有する主要DCを仮想統合した知見を生かし、「顧客がもつDCも含めた統合運用のアウトソーシング受注の可能性を検討していく」(矢島章夫専務)と話す。
クラウドやSaaSでも同様だ。大規模ユーザーが、自身が所有するDCや電算室で利用するシステムもあれば、外部のクラウドサービスを利用するケースもある。ITシステムの所有と利用が混在する場合でも、例えば特定のITベンダーが複数形態のシステムを仮想技術を使って統合的に運用。システムの維持管理コストを削減すれば、ユーザーの負担を大幅に減らすことができ、グリーンITの実現にも効果が大きい。技術的にはめどが立っていることから、スマートDC、スマートクラウド系のビジネス拡大に期待が高まる。
SMBの動き コスト削減で省電力化にニーズ
SMB(中堅・中小企業)市場で注目されているのはITインフラの最適活用だ。システム増強の際にはコスト削減の観点から省電力化を特徴とした製品の導入ニーズが高まりつつある。つまり、グリーンIT化の波が押し寄せているということだ。そのため、各メーカーはSMB向けに消費電力の削減を視野に入れた製品を市場投入するケースが多くなってきた。
SMB市場でITインフラの一つとして導入する傾向が高まっているのはストレージ関連製品。分散したサーバーのデータを管理するために購入されているようだ。SMBは、サーバーのついでに購入するケースが多かったストレージを積極的にリプレースするようになった。このため、ストレージの機能やランニングコストなどが着目されることになったのである。
メーカーが発売しているストレージのなかには、アクセスしていないディスクの回転を停止することが可能な「MAID」技術を応用した省電力化に対応した製品が登場している。容易なデータ管理という点では、ファイルサーバーをNAS(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)方式でストレージで管理することでリソースの有効的に活用する製品も発売されている。ストレージ管理ソフトでは、節電やCO2削減に利用可能な機能を搭載するケースも出てきている。
先行き不透明な景況感から、ITインフラに対する投資意欲が薄れている状況ではあるものの、ユーザー企業にとっては「必要不可欠なものには投資する」という意識は変わっていない。そんな状況の下、グリーンITを視野に入れた製品を提供すれば、システム案件を獲得できる可能性が期待できるといえよう。