サーバーのなかで唯一の成長分野といわれたx86(IA)サーバー市場が、景気後退の影響を受けている。調査会社ガートナージャパンが調べた今年度第2四半期(4~6月)の市場動向結果(速報値)には、その実態が如実に現れている。今年中の回復は見込めないとの分析もあり、少なくとも年内は厳しい環境が続きそうだ。
4~6月の出荷台数は25.8%減
限られた需要をどう奪取するか
年内の回復は見込めない? ガートナージャパンが8月上旬に出した最新レポートでは、今年4~6月のx86サーバーの出荷台数は9万3873台。前年同期と比べると25.8%減で、10万台を割り込んだのは同社がx86サーバー市場を調査し始めてから初めてという。同社の青山浩子アナリストは、「景気後退によるIT投資抑制の影響。(大幅減少は)日本だけでなく、世界共通の傾向」と分析している。有望市場だったx86サーバーについても、不況による需要減少は同じで、大きな打撃を受けている。

厳しい環境は各ベンダーの前年同期比での出荷台数をみると、さらに明白になる。図1に、x86サーバー上位5社の対前年同期比成長率をまとめた。すべての企業がマイナス成長で、その落ち込み幅はかなり大きい。最も落ち込んだデルは43.6%減で、減少幅が最小の富士通でも11.2%減になった。
一方、ベンダー別の順位はどうか。図2にまとめたが、上位5社中、順位に変動があったのは3位の富士通と4位のデル。1位のNEC、2位の日本ヒューレット・パッカード(日本HP)、5位の日本IBMの順位は変わっていない。前年同期は4位だった富士通は、シェアを2.5ポイント上昇させて3位に浮上し、代わりにデルが4.8ポイント減少して4位に落ちた。

ガートナージャパンの亦賀忠明・バイスプレジデント兼最上級アナリストは、今後の見通しについて、「景気後退の影響を受けるのは、今後も同じ。少なくとも2009年中は相当厳しい結果となるだろう」と予測。「年内の底入れ、回復傾向」は見通していない。中堅・中小企業のIT動向に詳しいノークリサーチの伊嶋謙二社長も、「今年度はかなり苦しい状況だろう。年間出荷台数50万台割れの可能性もある」と話している。
サーバー統合でブレード
教育機関、ネット企業に期待 年間出荷台数50万台割れという、過去5年間ではみられなかった最悪の環境。しかし、そのなかで需要が期待できる分野は何か。業種・業態を問わないソリューションでいえば、「サーバーの集約・統合」(調査会社のノークリサーチ)がある。既存システムを構成するサーバーを仮想化技術とブレードサーバーを組み合わせた新システムに集約し、運用コストと消費電力費の削減を図るニーズは確実にある。「初期投資は当然かかるが、既存システムと新システムで運用コストの低減額を具体的に示せば、ユーザーに関心を示してもらえる」(日本HPの担当者)。サーバー統合ソリューションのハードインフラとしてブレードサーバーの需要が底堅く、「今年度は全x86サーバーのうち13.8%を占める」(ノークリサーチ)まで成長しそうだ。
一方、業種でいえば、教育機関とネット系サービス企業が挙げられる。文部科学省は、教育機関のIT利活用を促進するため「スクール・ニューディール構想」と呼ぶプランを考案。総額1兆1000億円を投じる。メインはPCや地上デジタル放送対応のテレビ、校内LANの整備だが、インフラが整えば、eラーニングシステムなどソリューション導入のためのサーバー投資も生まれる。
また、ネット系のサービス企業は、複数のメーカーが共通して実需を体感している分野。NECの浅賀博行・ITプラットフォームマーケティング本部統括マネージャーと、デルの布谷恒和・ラージ・エンタープライズマーケティングジャパン・マーケティング本部サーバブランドマネージャは、今後の需要を期待する分野としてネットサービス企業を挙げた。ネットサービス企業はITインフラが重要な事業基盤。そのため、企業規模を問わずIT投資に積極的で、ITに精通した人材も多いため、先進技術に飛びつきやすいのだ。各社はこれらをターゲットにしたソリューションシナリオを用意して、販売パートナーとともに開拓を図るはずだ。厳しい状況下での限られたニーズ。それを各ベンダーがどう奪うか。各メーカーのこの1年のx86サーバー市場は激しく揺れそうだ。