準備は万端――。「Windows 7」の法人向けボリュームライセンス発売日に開催した記者説明会で、樋口泰行社長はそう言いたげな数字を並べた。新OS関連のソリューションを用意したパートナー数、製品対応を表明した周辺機器・ソフトメーカー数、採用を決めたユーザー企業数…。そのすべてが、「Windows Vista」の発売時よりも上回っていることを明らかにして、熱っぽく語った。スタートダッシュにかける意気込みは「Vista」以上だ。
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樋口泰行社長
対応ベンダー数は「Vista」以上
法人向けボリュームライセンスを発売した9月1日時点で、「Windows 7」関連のソリューションを用意したITベンダーは21社。周辺機器およびソフトメーカーの28社が新OSへの対応を終了した。そして、同日付で163のユーザー企業・団体が「Windows 7」の採用を決めたという。マイクロソフトは明示した項目で、数字だけでなく具体的なパートナー企業、ユーザー企業を示してみせた。これらの数字はすべて、「Windows Vista」の発売時を上回る。例えば、採用を表明したユーザー企業は、「Vista」の発売時点では18社・団体しかいなかったから、「Windows 7」は発売前にその10倍弱のユーザー企業から評価されたことになる。
樋口社長は、「2010年末までに1000万本の『Winodws 7』が導入される」と予測。そのうえで、IT調査会社IDCのデータを引き合いに出し、波及効果を「IT企業の3500社、17万人が製品・サービスの展開に従事することになり、『Windows 7』関連の製品・サービス売上高は2兆3000億円に達する」との見込みを示し、新OSがもたらす経済効果の高さを強調した。
対応ソリューションの提供を開始しているパートナー企業の1社、大塚商会の大塚裕司社長は、景気回復後の注力商品として「Windows Server 2008 R2」とともに、「Windows 7」を挙げた。一方、NECの販売特約店で静岡県が主要商圏の静岡情報処理センターは、「(地方の中小企業の)ユーザーは新OSを気にしており、注目度は非常に高い」(鳥居誠・執行役員企業ソリューション事業部長)とし、ビジネスポテンシャルを感じている。ITベンダーの評価はまずは上々といったところだろう。
ユーザーの動向はどうか。国内の法人(企業・団体)で「Windows Vista」を導入しているのはわずか10%(調査会社のアイ・ティ・アール調べ)だけに、マイクロソフトにとって「Windows 7」は絶対に失敗できないクライアントOSなのだ。それに、年末から来年にかけては新製品ラッシュで、「Exchange Server」「Office」「Visio」「SharePoint Server」などの新版が続々と登場する。「先陣を切るクライアントプラットフォームで下手は打てない」(マイクロソフト社員)という気持ちもある。
今回、マイクロソフトは、これまで主眼を置いていた製品の優位性の訴求だけでなく、パートナーを巻き込んだ「エコシステム」がすでに出来上がっている点を猛烈にPRしている。ユーザーに安心感を、ITベンダーにはビジネスポテンシャルの高さを植え付け、スタートダッシュを決めたい意向が伝わってくる。(木村剛士)