中国語の翻訳ソフトなどを手がけるソフトメーカーの高電社(岩城陽子代表取締役)は、法人営業を強化する。今年10月に販売部門を切り離し、新会社を設立。企業や自治体、学校をターゲットにオンラインサービスの本格的な販売に乗り出した。クラウドやSaaSの登場でパッケージソフト市場は先細りが予想されている。こうした背景から同社では、パッケージソフトビジネスから翻訳ソフト技術などを活用したネット経由のサービスに力を入れている。新会社で企業などへの営業力を高め、法人ビジネスの拡大につなげる。
企業・文教を開拓し、売上高5億円目指す
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| 原田幸一 高電社販売営業部部長 |
高電社が10月1日に設立した新会社は、「高電社販売」。高電社の製品やサービスを専門に扱う販売会社で、法人向けの営業を核に展開する。本社を東京・赤坂に置き、従業員数は10名。大阪にも営業拠点を設け、4名を配置した。新会社の設立で高電社本体はソフト開発に専念する。
「分社化は経営的にみると効率が悪いが、開発と営業に線引きをすることで社員に緊張感をもたせ、営業部員を育成することにつながる」と、原田幸一・高電社販売営業部部長は新会社設立の狙いを説明する。
高電社販売は、翻訳や語学学習などをインターネット経由で利用できるサービスを法人向けに販売する。オンライン翻訳サービスでは、日本語のホームページを英語、中国語、韓国語にクリック一つで翻訳するサービスやレンタル形式の翻訳エンジンなどを提供するASPサービス「J・サーバー プロフェッショナル」を企業や自治体などに販売。翻訳サービスは1言語あたり月額3万円から提供する。
語学学習サービスは、中国語学科や第二外国語で中国語を学ぶ学生をターゲットに中国語検定対策のeラーニングを大学に販売する。同時に中国語翻訳ソフト「チャイニーズ・ライター」や日本語や中国語などの音声読み上げソフト「ワールドボイス」といったパッケージソフトも売り込む。
「J・サーバー プロフェッショナル」の翻訳サービスは低コストでサイト内容を外国語に変換して海外向けに情報発信できることから、東京都の足立区や北区、埼玉県の春日部市や所沢市などの地方自治体や企業など100社が利用。一方、eラーニングは明治大学や立命館大学など11校が導入している。
高電社販売は、提案型営業の導入や教育プログラムなどを通じて社員の営業力を強化し、法人開拓を加速。11年3月末までに累計で「J・サーバー プロフェッショナル」で200件、eラーニングで50校の獲得を目指す。
高電社はパッケージソフト販売を主力にしてきたが、インターネットの普及を背景に2000年にパッケージビジネスからソフトや関連技術を使ったネットサービスに事業の中心をシフトする方針を打ち出した。
パッケージソフトではディストリビュータに委託して販売してきたが、ネットサービスは「既存の販路が使えない商品で、自力で売れるだけの営業力を高めることが重要」(原田部長)と考えたことも、新会社設立を後押しした。
高電社販売は、2011年3月期で5億円の売上高を見込む。高電社や中国法人の高電社上海をあわせたグループ全体では、11年3月期で売上高10億円を計画している。(米山淳)