テレビ会議/ウェブ会議システムのニーズがますます高まっている。出張費など経費節減やコミュニケーションの向上など、業務効率化を図る狙いで企業が導入するケースが増えているのだ。ITベンダーにとってはビジネスチャンスをつかむ可能性が高いため、新しい製品・サービスの創造で提供拡大を本格化させる動きが出始めている。

タタ・コミュニケーションズでは、テレビ会議システムのクラウド・サービスを提供している
市場規模は拡大傾向に
ユーザー満足度も向上
調査会社のシード・プランニングによれば、テレビ会議/ウェブ会議の国内市場は拡大傾向にある。市場規模は2006年に209億円、08年に315億円。13年に08年の2倍以上となる675億円まで伸び、18年に1956億円に達すると予測している。
市場が拡大しているのは、テレビ会議システムの高画質化が大きく寄与している。HD(ハイ・ディフィニション)化が進んでおり、09年には60%を占めるようになっている。12年には96%がHD化になる模様。これにより、多拠点に支社や支店をもつ大企業が幹部などを集めた定期的な会議に利用するようになったほか、工場や研究所を抱える製造業などが生産した製品や開発している製品をテレビ会議を通じて遠隔から検証に使ったりしている。利用シーンが増えていることが、導入を促進する要因とみられる。
また、テレビ会議に加え、ウェブ会議を提供するベンダーが増えていることが大きいという。選択肢が増えたことで、安価なウェブ会議を使って、日常業務で社員が頻繁にコミュニケーションをとることで業務効率化や営業機会増加を図るユーザー企業が多くなっているということだ。シード・プランニングでは、専用端末を設置するタイプのテレビ会議と音声会議サービスで76%を占める一方でウェブ会議が全体の12%であったものの、12年にウェブ会議が専用端末を設置するタイプのテレビ会議と同程度の市場規模になると予測している。
さらに、シード・プランニングが昨年8月から11月にかけて実施した「テレビ会議/ウェブ会議/音声会議のビジネス利用実態」の調査では、ユーザー企業による利用の総合評価が「非常に満足」と「満足」で68%になり、04年に調査した時と比べて4ポイント増加したとしている。
販社網の構築やサービス拡大へ
ベンダー間で競争激化の波も
ユーザー企業によるテレビ会議やウェブ会議への導入機運が高まっていることで、ベンダー各社がビジネス拡大に本腰を入れ始めている。販社網の構築や製品ラインアップの強化、新しいサービスの創造で需要を開拓する動きが活発化してきている。
ウェブ会議で国内トップシェアのブイ・キューブでは、直販が中心だったビジネスモデルを変え、販社経由で拡販していく方針を打ち出した。「当社がカバーできる範囲は限られている。ニーズが高まっていることからも、ここで一気に需要を開拓する」(間下直晃社長兼CEO)ためだ。現在、販売代理店数は有力なパートナーが20社程度で、2次店などを含めると100社弱に達している。
「多くの販売パートナーが拡販の意欲を高める環境づくりを整備する」(間下社長兼CEO)という。販社への支援強化策については今後詰めていくが、「各社それぞれのメリットになる支援策を講じる」考え。これにより、今年度(10年12月期)の売上高について前年度比30%増を狙う。
テレビ会議市場では、ライフサイズ・コミュニケーションズの国内総販売代理店である日立ハイテクノロジーズが新規顧客を開拓しようと懸命に活動している。なかでも、中堅・中小企業(SMB)市場でシェア拡大を図るために価格を39万8000円からとリーズナブルに設定した「LifeSize Passport」シリーズを発売。同製品を契機に、全国網で販社体制を構築することに力を注いでいる。とくに、事務機系ベンダーに対して「ライフサイズの技術をOEM(相手ブランドによる製品供給)することにより、ベンダーが自社ブランドで提供するのはどうかと提案している」(日立ハイテクの今村秀行・ITソリューション営業本部ネットソリューション部長代理)ようだ。
通信関連業界では、海外の通信事業者がテレビ会議システムをベースに日本市場でのビジネスを本格させる動きが出ている。インドの大手通信事業者であるタタ・コミュニケーションズでは、通信回線サービスの「グローバル・ミーティング・エクスチェンジ」とシスコシステムズなどネットワーク関連機器メーカー製品を組み合わせることで、テレプレゼンスの「パブリック・クラウド・サービス」を創造した。現在、ホテルや公共施設などへの導入を促しており、「日本で多くの拠点でチェーン展開しているホテルと交渉中」と、法人向け事業を統括するリチャード・ノット・バイスプレジデントは話しており、「日本のSIerなどと協業するとも模索したい」考えだ。
市場規模が拡大する環境に伴い、ベンダー各社の動きが活発化しており、さらなる競争激化の様相を呈している。