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中国で戦う現地キーパーソンが語る今 日系IT企業の勇姿をみる
2015/06/25 20:48
週刊BCN 2015年06月22日vol.1584掲載
「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌を遂げつつある中国。日系ITベンダーは、どのようにビジネスを拡大しようとしているのか。現地のキーパーソンに、これまでの進捗状況や現在の市況感、今後の戦略を聞いた。(構成:真鍋武)
欧智卡信息系統商貿(上海)
岩宮宏 総経理
生年 1964年
出身 千葉県
中国赴任生活 月半分の出張通い
●現地化の加速
設立から11年が経過し、顧客数は2500社を超えた。保守サポートの契約数も1000件を突破している。今後もさらなる成長を目指す。
そのために進めるのは、現地化だ。中国の時代や発展スピードに合った経営を実践するには、日本人が中心の会社では限界がある。すでに、総経理を除くすべてのスタッフは中国人となった。この現地人材を中心とした会社づくりを加速していきたい。
ただし、当社のお客様は日系企業だ。満足度向上のためにも、日本側でのお客様とのコミュニケーションはさらに充実を図っていく。
当社の強みは、特定のプロダクトだけでなく、お客様の状況に合わせた最適な製品・サービスをトータルで提供できることだ。とくに今後は、中国で製品の設計・開発を進める製造業が増えるとみている。CAD分野では、専門の技術者を抱えており、CAD・CAM・CAEや3Dプリンタ・スキャナの販売だけでなく、分析・受託製造サービスまでを提供することができる。
また、中国市場は急激に成長しているが、情報漏えい対策やコンプライアンスの整備が追いついていない会社が多い。ITを活用して、お客様のグローバルで通用するセキュリティ体制づくりを支援していきたい。
中長期的な目標は、顧客数を5000社にまで増やすこと。保守サポート契約数は2000件を目指す。お客様の要望があれば、現在の上海、蘇州、大連、広州に加え、さらなる拠点拡充も検討していく。
野村総研(北京)系統集成
角河真澄 総経理
生年 1963年
出身 福岡県
中国赴任生活 2014年6月から
●産業系の顧客開拓に力点
当社の基本戦略は、日本向け事業と中国向け事業をバランスよく成長させることにある。
日本向け事業では、単なる下流工程のシステム開発だけでなく、要件定義や概要設計、本番環境の保守サービスなど、上流と下流を含めたオフショアITサービスを提供している。数年前から力を注ぎ始めて、徐々に実績が伴ってきた。今後も日本本社と密接にコミュニケーションを取りながら、中国で手がけたほうが効率がよくて、トータルコストを下げられる案件を請け負っていきたい。
中国向け事業は、流通系・金融系・産業系とIT基盤のソリューション販売が中心だ。大規模から中小規模まで、日系企業をメインに幅広くおつき合いさせていただいている。中国の日系マーケットには限りがあり、最近では日本以上に競争が激しいが、当社は野村総研(上海)と密に連携して、コンサルティングからITソリューションまでのトータルサービスを提供できることを強みにしている。この特色を生かし、注力領域のセキュリティ分野でも、セキュリティコンサルティングから診断サービス、実際のソリューション提供までを一貫して支援していきたい。
2015年度は、とくに中国での産業系の顧客開拓に力を注ぐ。おつき合いできていない産業系の日系企業は多く、拡大余地は大きい。さらに現在、パッケージソフトを中核とした産業系の新たなソリューションを研究・開発している。本社会計の2015年度(16年3月期)内には、中国市場に投入したい。
日立系統(広州)
山本健治 総経理
生年 1956年
出身 神奈川県
中国赴任生活 2014年4月から
●One HITACHI
昨年4月に広東華智立信軟件から社名を変更して再出発を果たし、7月には上海分公司を立ち上げるなど、会社としての基盤を整備してきた。事業は概ね順調に推移しており、2014年度(14年12月期)の売上高は当初目標を上回る約4億円を記録した。
とくに好調なのが、得意分野のプラットフォーム・保守事業だ。主要ターゲットは日系企業だが、最近では製造系部門だけでなく、非製造系部門の情報システムも安定して運用したいという機運が高まっている。また、中国における日立グループの情報・通信システム部門の再編によって、清算した日立(中国)信息からプラットフォーム・保守事業の顧客約100社を引き継いだ。今後は、当社の特色である監視サービスやコンタクトセンターサービスなど、さらなる付加価値を提案していきたい。
一方、ローカル企業に対しては、養老やリースなどのソリューション事業を展開している。徐々に実績が出はじめているが、当社単体でソリューションだけを提案するのでは、お客様のニーズを満たしきれないと感じている。今後は“One HITACHI”をキーワードに、中国の日立グループ会社と連携を図りながら、コンサルティングなどを含めたお客様の課題を解決するトータルサービスを提案していきたい。
2015年度の目標は、売上高10億円と単年度黒字の達成だ。プラットフォーム・保守事業、コンタクトセンター事業、ソリューション事業を三本の柱として、盤石な経営基盤を築きあげる。
天津提愛斯海泰信息系統
松田毅 副董事長兼総経理
生年 1962年
出身 徳島県
中国赴任生活 2014年10月から
●ローカル企業をさらに取り込む
サーバールーム面積3000m2の「天津濱海高新IDC」を通じて、主にハウジングとIaaS「飛翔雲」を提供している。現在、サーバールーム約2000m2、ラック換算では約750ラックが稼働可能となっており、この半分が実際に稼働している。
すでに顧客の6割方は、中国ローカル企業となった。もともとのターゲットは、現地の日系企業だったが、実際のところ、日系が集中している上海エリアの企業が、天津にサーバーを置くかというと、例えば日本の福岡の企業が東京のDCにサーバーを置くようなもので、現実的ではなかった。そこで、昨年あたりからローカル開拓に力を注ぎ始めたわけだ。
ローカル企業のメインターゲットは、天津に拠点を置く金融機関だ。中国の金融機関は、DC採用の基準としてTier3レベルの品質を求めるようになってきているが、まだ現地のDC事業者では、このレベルに達していないケースが多く、当社に優位性がある。また、天津では、自由貿易試験区の設立を受けて、金融機関が進出する可能性が高い。ここ1~2年で、金融系のユーザーをさらに取り込みたい。
とはいえ、競合のDC事業者も力をつけてきている。競争激化は避けられない。今後は、ハウジングの顧客に対して、運用サービスを提案するなどして、付加価値を提供していく方針だ。現地のDC事業者との協業も検討している。2015年度(15年12月期)は、売上高を前年度比で20%成長させることが目標だ。
徳碩管理諮詢
中野洋輔 大中国区総経理
生年 1968年
出身 福岡県
中国赴任生活 2015年4月から
●再建
2004年の設立以来、売上高は2ケタ成長を続け、急速に業容を拡大してきた。その反面、サービス品質が低下したり、競合との価格競争に巻き込まれたりする事案が増えてきた。
そこで今一度、中国事業を立て直す。すでに組織変更を終え、従業員数は従来の半分以下の100人程度となった。今後は、日本との連携を強め、コンサルティング方法論の整備やナレッジの共有、テンプレートの充実などを図り、サービス品質を高めていく。
ターゲットも見直す。これまでは、中国ローカル企業を中心に開拓していたが、今後は日系・非日系を問わず、高品質なサービスを求める企業全般を支援していく。
中国の企業は、日本以上にビジネスのスピードが速く、新しいものを取り入れて成長を図りたいというニーズが旺盛だ。得意分野のSAPビジネスでいえば、すでにCRMやHybris、HANAなどの最新ソリューションを組み合わせて導入したいという要望も出てきている。また、グループ人事管理の「Success Factors」の需要も旺盛だ。高品質なサービス、付加価値が高いソリューションに加え、企画から設計、構築、運用と、システムを含めたお客様の業務ステージを一気通貫で支援できる当社の強みを最大限に発揮する。
今年度の目標は、昨年度にかなわなかった黒字化の達成だ。今一度、成長のベースを構築し、無理なく高い品質を提供できる体制を整える。将来は、中国でも日本と同等の知名度を誇れるまでに成長したい。
京石刻恩信息技術(北京)
板山可成 董事・総経理
生年 1955年
出身 東京都
中国赴任生活 2011年12月から
●ヒット・アンド・アウェイ
当社の主要ビジネスは、製造業向けの組み込みソフトウェア開発だ。日本向けにオフショア開発として提供しているものと、中国の日系現地法人向けの2種類がある。売上高に占める割合は、日本向けが2割で、中国向けが8割となっている。
2014年度(14年12月期)の業績は、増収で終えたが、経営環境は厳しい。昨今の人件費高騰と円安によって、オフショア開発の市場環境がシビアになっている。また、中国の日系企業も、お金の出所は日本本社であるケースが多いので、今後も円安の影響を懸念している。
当社はいくつか大型の契約を結んでいるとはいえ、先行きを楽観することはできない。とくに中国のオフショア開発は、今後1~2年で利益の捻出が困難になる可能性が高い。
そこで、2015年度は、新たな事業の柱とすべく、中国国内でのソリューションビジネスに着手しようと検討しているところだ。日本で販売が好調なM2M/IoTプラットフォームソリューション「Toami」など、最先端の自社商材を、まずは中国の日系企業に向けて売り込みたい。
とはいえ、大きなリスクを冒してビジネスモデルの転換を図るわけではない。“ヒット・アンド・アウェイ”とでもいおうか、少し挑戦してみて、実際の感触を確かめながら、着実に事業を成長させていくのが当社のスタイルだ。
無理はしない。その意味でも、2015年度の売上高は、昨対比で数%増の計画にとどめている。
天津梯递息軟件技術
江口隆広 総経理
生年 1965年
出身 愛知県
中国赴任生活 2011年12月から
●満を持してPaaSを提供
日本向けオフショア開発の市場環境は、ここ数年で急速に厳しくなってきている。当社のオフショア開発は、100%日本本社向けで、従業員数も約20人と限られているので、現時点で余剰人員が出るほどの事態は起きてはいないが、対策は欠かせない。今後は、コストメリットだけを頼りにするのではなく、付加価値が高い上流工程の開発を強化するなどして、日本に必要な開発リソースとして活用してもらう。中長期的には、50人程度の開発体制を維持していきたい。
オフショア開発は、現状、売上高の9割程度を占めているが、当社が中国に拠点を設けている真の目的は、中国国内向けのSI・ソリューションビジネスにほかならない。今年4月に、中国でのクラウド環境の構築やローカライズが完了したことを受けて、設立当初から目指していたPaaS型のクラウドサービス「Trustpro(トラストプロ)」の提供を開始した。商談管理や設備管理、資材管理などの機能を提供するほか、ユーザーのニーズに合わせた業務アプリケーションをつくり込むことができるサービスだ。まずは、天津に拠点を構える日系の中小企業を主要ターゲットとして、1年間で10社に提供することを目標にしている。
また、中国では最近、法人のモバイル活用が急速に普及してきている。社内の開発体制を整えた後には、「Trustpro」の中国国内向けの独自機能の開発や、Android対応も進めて、現地のニーズに応えていきたい。
莎益博工程系統開発(上海)
飯田将史 首席執行官
生年 1974年
出身 東京都
中国赴任生活 2015年1月から
●CAE専業の強みを発揮
当社は、CAE(Computer Aided Engineering)ソリューションの販売を専業で手がけている。主要ターゲットは、中国のローカル企業だ。すでに、顧客に占めるローカル企業の割合は9割に達しており、顧客数も年平均30~40%ペースで増えている。
ローカルビジネスが好調なのは、当地で現地化を推進していることが大きな要員と捉えている。現在、35人前後の従業員を抱えているが、私を除いた全員が中国人で、中国式の経営を実践している。
また、中国では、CAEの認知度が高まっており、現在、市場が成長期にあることの影響も大きい。とくに需要が旺盛なのが、自動車産業だ。当社は、グループ会社である米シグメトリックスの3次元公差マネジメントツール「CETOL 6σ(CETOL)」を、中国の大手自動車グループ、重慶長安汽車(長安自動車)の研究開発部門に導入するなど、大手企業の実績を着々と積み上げている。
製品の機能や品質に加えて、当社が強みとしているのが、専門の技術者を抱えたCEA専業ベンダーとしての充実したサポート体制だ。例えば、長安自動車は、「CETOL」だけでなく、当社のエンジニアリングサービスも採用している。
サイバネットシステムの中国を含んだアジア地域の売上高比率は、2014年度(14年12月期)が4.4%だ。2020年度には、これを10.9%までに拡大することを目標としているが、中国がそのけん引役となって、大きく会社の成長に貢献したい。
欧智卡信息系統商貿(上海)
大塚商会

生年 1964年
出身 千葉県
中国赴任生活 月半分の出張通い
●現地化の加速
設立から11年が経過し、顧客数は2500社を超えた。保守サポートの契約数も1000件を突破している。今後もさらなる成長を目指す。
そのために進めるのは、現地化だ。中国の時代や発展スピードに合った経営を実践するには、日本人が中心の会社では限界がある。すでに、総経理を除くすべてのスタッフは中国人となった。この現地人材を中心とした会社づくりを加速していきたい。
ただし、当社のお客様は日系企業だ。満足度向上のためにも、日本側でのお客様とのコミュニケーションはさらに充実を図っていく。
当社の強みは、特定のプロダクトだけでなく、お客様の状況に合わせた最適な製品・サービスをトータルで提供できることだ。とくに今後は、中国で製品の設計・開発を進める製造業が増えるとみている。CAD分野では、専門の技術者を抱えており、CAD・CAM・CAEや3Dプリンタ・スキャナの販売だけでなく、分析・受託製造サービスまでを提供することができる。
また、中国市場は急激に成長しているが、情報漏えい対策やコンプライアンスの整備が追いついていない会社が多い。ITを活用して、お客様のグローバルで通用するセキュリティ体制づくりを支援していきたい。
中長期的な目標は、顧客数を5000社にまで増やすこと。保守サポート契約数は2000件を目指す。お客様の要望があれば、現在の上海、蘇州、大連、広州に加え、さらなる拠点拡充も検討していく。
野村総研(北京)系統集成
野村総合研究所

生年 1963年
出身 福岡県
中国赴任生活 2014年6月から
●産業系の顧客開拓に力点
当社の基本戦略は、日本向け事業と中国向け事業をバランスよく成長させることにある。
日本向け事業では、単なる下流工程のシステム開発だけでなく、要件定義や概要設計、本番環境の保守サービスなど、上流と下流を含めたオフショアITサービスを提供している。数年前から力を注ぎ始めて、徐々に実績が伴ってきた。今後も日本本社と密接にコミュニケーションを取りながら、中国で手がけたほうが効率がよくて、トータルコストを下げられる案件を請け負っていきたい。
中国向け事業は、流通系・金融系・産業系とIT基盤のソリューション販売が中心だ。大規模から中小規模まで、日系企業をメインに幅広くおつき合いさせていただいている。中国の日系マーケットには限りがあり、最近では日本以上に競争が激しいが、当社は野村総研(上海)と密に連携して、コンサルティングからITソリューションまでのトータルサービスを提供できることを強みにしている。この特色を生かし、注力領域のセキュリティ分野でも、セキュリティコンサルティングから診断サービス、実際のソリューション提供までを一貫して支援していきたい。
2015年度は、とくに中国での産業系の顧客開拓に力を注ぐ。おつき合いできていない産業系の日系企業は多く、拡大余地は大きい。さらに現在、パッケージソフトを中核とした産業系の新たなソリューションを研究・開発している。本社会計の2015年度(16年3月期)内には、中国市場に投入したい。
日立系統(広州)
日立システムズ

生年 1956年
出身 神奈川県
中国赴任生活 2014年4月から
●One HITACHI
昨年4月に広東華智立信軟件から社名を変更して再出発を果たし、7月には上海分公司を立ち上げるなど、会社としての基盤を整備してきた。事業は概ね順調に推移しており、2014年度(14年12月期)の売上高は当初目標を上回る約4億円を記録した。
とくに好調なのが、得意分野のプラットフォーム・保守事業だ。主要ターゲットは日系企業だが、最近では製造系部門だけでなく、非製造系部門の情報システムも安定して運用したいという機運が高まっている。また、中国における日立グループの情報・通信システム部門の再編によって、清算した日立(中国)信息からプラットフォーム・保守事業の顧客約100社を引き継いだ。今後は、当社の特色である監視サービスやコンタクトセンターサービスなど、さらなる付加価値を提案していきたい。
一方、ローカル企業に対しては、養老やリースなどのソリューション事業を展開している。徐々に実績が出はじめているが、当社単体でソリューションだけを提案するのでは、お客様のニーズを満たしきれないと感じている。今後は“One HITACHI”をキーワードに、中国の日立グループ会社と連携を図りながら、コンサルティングなどを含めたお客様の課題を解決するトータルサービスを提案していきたい。
2015年度の目標は、売上高10億円と単年度黒字の達成だ。プラットフォーム・保守事業、コンタクトセンター事業、ソリューション事業を三本の柱として、盤石な経営基盤を築きあげる。
天津提愛斯海泰信息系統
TIS

生年 1962年
出身 徳島県
中国赴任生活 2014年10月から
●ローカル企業をさらに取り込む
サーバールーム面積3000m2の「天津濱海高新IDC」を通じて、主にハウジングとIaaS「飛翔雲」を提供している。現在、サーバールーム約2000m2、ラック換算では約750ラックが稼働可能となっており、この半分が実際に稼働している。
すでに顧客の6割方は、中国ローカル企業となった。もともとのターゲットは、現地の日系企業だったが、実際のところ、日系が集中している上海エリアの企業が、天津にサーバーを置くかというと、例えば日本の福岡の企業が東京のDCにサーバーを置くようなもので、現実的ではなかった。そこで、昨年あたりからローカル開拓に力を注ぎ始めたわけだ。
ローカル企業のメインターゲットは、天津に拠点を置く金融機関だ。中国の金融機関は、DC採用の基準としてTier3レベルの品質を求めるようになってきているが、まだ現地のDC事業者では、このレベルに達していないケースが多く、当社に優位性がある。また、天津では、自由貿易試験区の設立を受けて、金融機関が進出する可能性が高い。ここ1~2年で、金融系のユーザーをさらに取り込みたい。
とはいえ、競合のDC事業者も力をつけてきている。競争激化は避けられない。今後は、ハウジングの顧客に対して、運用サービスを提案するなどして、付加価値を提供していく方針だ。現地のDC事業者との協業も検討している。2015年度(15年12月期)は、売上高を前年度比で20%成長させることが目標だ。
徳碩管理諮詢
アビームコンサルティング

生年 1968年
出身 福岡県
中国赴任生活 2015年4月から
●再建
2004年の設立以来、売上高は2ケタ成長を続け、急速に業容を拡大してきた。その反面、サービス品質が低下したり、競合との価格競争に巻き込まれたりする事案が増えてきた。
そこで今一度、中国事業を立て直す。すでに組織変更を終え、従業員数は従来の半分以下の100人程度となった。今後は、日本との連携を強め、コンサルティング方法論の整備やナレッジの共有、テンプレートの充実などを図り、サービス品質を高めていく。
ターゲットも見直す。これまでは、中国ローカル企業を中心に開拓していたが、今後は日系・非日系を問わず、高品質なサービスを求める企業全般を支援していく。
中国の企業は、日本以上にビジネスのスピードが速く、新しいものを取り入れて成長を図りたいというニーズが旺盛だ。得意分野のSAPビジネスでいえば、すでにCRMやHybris、HANAなどの最新ソリューションを組み合わせて導入したいという要望も出てきている。また、グループ人事管理の「Success Factors」の需要も旺盛だ。高品質なサービス、付加価値が高いソリューションに加え、企画から設計、構築、運用と、システムを含めたお客様の業務ステージを一気通貫で支援できる当社の強みを最大限に発揮する。
今年度の目標は、昨年度にかなわなかった黒字化の達成だ。今一度、成長のベースを構築し、無理なく高い品質を提供できる体制を整える。将来は、中国でも日本と同等の知名度を誇れるまでに成長したい。
京石刻恩信息技術(北京)
日本システムウェア

生年 1955年
出身 東京都
中国赴任生活 2011年12月から
●ヒット・アンド・アウェイ
当社の主要ビジネスは、製造業向けの組み込みソフトウェア開発だ。日本向けにオフショア開発として提供しているものと、中国の日系現地法人向けの2種類がある。売上高に占める割合は、日本向けが2割で、中国向けが8割となっている。
2014年度(14年12月期)の業績は、増収で終えたが、経営環境は厳しい。昨今の人件費高騰と円安によって、オフショア開発の市場環境がシビアになっている。また、中国の日系企業も、お金の出所は日本本社であるケースが多いので、今後も円安の影響を懸念している。
当社はいくつか大型の契約を結んでいるとはいえ、先行きを楽観することはできない。とくに中国のオフショア開発は、今後1~2年で利益の捻出が困難になる可能性が高い。
そこで、2015年度は、新たな事業の柱とすべく、中国国内でのソリューションビジネスに着手しようと検討しているところだ。日本で販売が好調なM2M/IoTプラットフォームソリューション「Toami」など、最先端の自社商材を、まずは中国の日系企業に向けて売り込みたい。
とはいえ、大きなリスクを冒してビジネスモデルの転換を図るわけではない。“ヒット・アンド・アウェイ”とでもいおうか、少し挑戦してみて、実際の感触を確かめながら、着実に事業を成長させていくのが当社のスタイルだ。
無理はしない。その意味でも、2015年度の売上高は、昨対比で数%増の計画にとどめている。
天津梯递息軟件技術
TDCソフトウェアエンジニアリング

生年 1965年
出身 愛知県
中国赴任生活 2011年12月から
●満を持してPaaSを提供
日本向けオフショア開発の市場環境は、ここ数年で急速に厳しくなってきている。当社のオフショア開発は、100%日本本社向けで、従業員数も約20人と限られているので、現時点で余剰人員が出るほどの事態は起きてはいないが、対策は欠かせない。今後は、コストメリットだけを頼りにするのではなく、付加価値が高い上流工程の開発を強化するなどして、日本に必要な開発リソースとして活用してもらう。中長期的には、50人程度の開発体制を維持していきたい。
オフショア開発は、現状、売上高の9割程度を占めているが、当社が中国に拠点を設けている真の目的は、中国国内向けのSI・ソリューションビジネスにほかならない。今年4月に、中国でのクラウド環境の構築やローカライズが完了したことを受けて、設立当初から目指していたPaaS型のクラウドサービス「Trustpro(トラストプロ)」の提供を開始した。商談管理や設備管理、資材管理などの機能を提供するほか、ユーザーのニーズに合わせた業務アプリケーションをつくり込むことができるサービスだ。まずは、天津に拠点を構える日系の中小企業を主要ターゲットとして、1年間で10社に提供することを目標にしている。
また、中国では最近、法人のモバイル活用が急速に普及してきている。社内の開発体制を整えた後には、「Trustpro」の中国国内向けの独自機能の開発や、Android対応も進めて、現地のニーズに応えていきたい。
莎益博工程系統開発(上海)
サイバネットシステム

生年 1974年
出身 東京都
中国赴任生活 2015年1月から
●CAE専業の強みを発揮
当社は、CAE(Computer Aided Engineering)ソリューションの販売を専業で手がけている。主要ターゲットは、中国のローカル企業だ。すでに、顧客に占めるローカル企業の割合は9割に達しており、顧客数も年平均30~40%ペースで増えている。
ローカルビジネスが好調なのは、当地で現地化を推進していることが大きな要員と捉えている。現在、35人前後の従業員を抱えているが、私を除いた全員が中国人で、中国式の経営を実践している。
また、中国では、CAEの認知度が高まっており、現在、市場が成長期にあることの影響も大きい。とくに需要が旺盛なのが、自動車産業だ。当社は、グループ会社である米シグメトリックスの3次元公差マネジメントツール「CETOL 6σ(CETOL)」を、中国の大手自動車グループ、重慶長安汽車(長安自動車)の研究開発部門に導入するなど、大手企業の実績を着々と積み上げている。
製品の機能や品質に加えて、当社が強みとしているのが、専門の技術者を抱えたCEA専業ベンダーとしての充実したサポート体制だ。例えば、長安自動車は、「CETOL」だけでなく、当社のエンジニアリングサービスも採用している。
サイバネットシステムの中国を含んだアジア地域の売上高比率は、2014年度(14年12月期)が4.4%だ。2020年度には、これを10.9%までに拡大することを目標としているが、中国がそのけん引役となって、大きく会社の成長に貢献したい。
「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌を遂げつつある中国。日系ITベンダーは、どのようにビジネスを拡大しようとしているのか。現地のキーパーソンに、これまでの進捗状況や現在の市況感、今後の戦略を聞いた。(構成:真鍋武)
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