【上海発】日系IT企業の2015年の中国ビジネスが、好調に推移している。BCN上海支局が、日系IT企業の中国現地法人50社を対象とする独自アンケート調査を行った結果、約63%の企業では上半期(1~6月)の売上高が前年同期比で2ケタ成長していることがわかった(有効回答数は46社)。対日オフショア開発ビジネスが伸び悩んだ一方で、好調な中国国内向けビジネスが日系IT企業の成長を後押ししている。(上海支局 真鍋武)
今回、BCN上海支局が調査を行った対象は、上海と北京を中心とした日系IT企業の中国現地法人50社。各社は総じて中国国内向けビジネスを手がけており、このうちの28社は対日オフショア開発ビジネスも展開している。調査の結果、有効回答を得られた46社において、上半期の売上高は84.8%が前年同期比で成長しており、2ケタ成長を遂げたのは63.1%に達したことがわかった(グラフ参照)。中国のGDP成長率は7%と減速傾向にはあるが、工業和信息化部(工信部)によると中国ソフトウェア・情報技術サービス業の上半期の市場規模は前年同期比17.1%成長と依然高い伸びを示しており、日系IT企業もその恩恵に浴したかたちだ。
全体では好調に推移しているが、事業別では、オフショア開発が伸び悩んでいる。事業別の設問に対する回答では、上半期のオフショア開発事業の売上高が前年同期比で0~10%未満の成長と回答した企業が約40%、マイナス成長が約30%だった。中国国内の人件費高騰と急激な円安元高によって市場環境は厳しくなっており、IT技術者一人あたりの平均人月単価が35万円を超えている日系IT企業は約76%に達している。上半期には、日立製作所が対日オフショア子会社の日立華之櫻信息系統(上海)を清算したほか、ここ1年の間に、NTT DATA(中国)では約500人、NEC(中国)では約300人、自社で抱えるオフショア開発の技術者が減少している。
ただし、日本国内でもIT技術者の不足が深刻化していることから、今後も約80%の日系IT企業が、オフショア開発事業について現状を維持する、もしくは拡大する方針を示している。
一方、上半期の中国国内向けビジネスが成長した企業は、86.7%。顧客の過半数以上を現地の日系企業で賄っている日系IT企業が約80%に達した。中国商務部によると、上半期の日本の対中直接投資額は、前年同期比16.3%減の20億1000万米ドルと減少しているが、日系企業のIT投資については、前年同期と変わらないと感じている日系IT企業が過半数を占めた。ウイングアーク1stやセゾン情報システムズなど、もともと中国ローカルIT市場を中心に開拓してきた企業が、最近になって日系向けビジネスを強化する動きもみられる。製造業の景況が悪化している一方で、サービス業のIT投資が旺盛とみている企業が多い。今後は中国を市場と捉えて事業展開している日系企業から、いかに案件を獲得するかがカギとなる。
帝国データバンクによると、今年6月時点の中国の日系企業数は、2012年12月比で7.9%減少。日系ユーザー企業に依存したままでは、中長期的な成長は期待できないので、非日系マーケットに入り込む必要がある。アンケート調査では、約75%の日系IT企業がローカル企業向けの提案に意欲を示したが、実際に成果が出ているケースはまだ少ない。受注案件の売掛金回収リスクを理由に、ローカル企業向けビジネスに躊躇している企業も多い。既存のオフショア開発や日系企業向けビジネスで安定的な収益を確保したうえで、ローカル開拓に挑戦するという手法が、今後の主流になるとみられる。