歯科医院の経営に向けたコンサルティングやファイナンスなどの事業を手がけるジャパンデンタル(今井範嗣社長)は、開業を目指す歯科医師への融資データなどを社内で管理していることから、常に強固なセキュリティ対策を施す必要があった。選んだ製品は、ウォッチガード・テクノロジー・ジャパン(ウォッチガード)のUTM(統合脅威管理)アプライアンス。以前よりもセキュアな環境を整えることができただけでなく、運用面、コスト面の軽減にもつながった。
【今回の事例内容】
<導入企業>ジャパンデンタル歯科医師を対象とした専門金融会社として1979年2月に設立。金融商品をはじめ、歯科医院の経営をサポートするトータルコンサルティングサービスを提供している
<決断した人>山崎浩信
企画部部長
ジャパンデジタルのシステム関連の責任者として企画や運用など全般を担当する
<課題>重要なデータを漏えいさせないために、強固なセキュリティシステムを必要としていた
<対策>外部からの攻撃を防ぐためにウォッチガードのUTMアプライアンスを導入
<効果>低コストで迅速にセキュリティ対策を講じることができた
<今回の事例から学ぶポイント>コストをかけなくても重要なデータを守ることができる
導入していたサービスが終了
ジャパンデンタルは、歯科医師を対象とした専門金融・コンサルティング会社として1979年2月に設立した。東京を本拠地として、札幌、仙台、岐阜(中部)、大阪、福岡に営業拠点をもっている。金融業に加えて、開業を目指す歯科医師や既存の歯科医院の経営に関するコンサルティングを手がけることで、歯科医院を全面的にサポートしている。
同社のIT化について、山崎浩信・企画部部長は、「1999年から『C/S型システム』を導入し、クライアント端末にアプリケーションをインストールして、データベースサーバーに直接アクセスしていた」と話す。クレジット情報をはじめとした顧客情報や債権を管理していたため、クローズドなシステムを構築し、ネットワーク関連は、KDDIのIP-VPNとセキュリティサービスを採用していた。できるだけコストをかけずに、情報漏えいを防ぐことに取り組んでいたのだ。
ところが、KDDIがサービスの統合を理由に利用サービスの提供を、2015年3月31日に終了することになった。今後の対策について山崎部長は、同社のシステム構築を担当している、システムとネットワーク両方のインテグレーションを強みとする浅間商事に相談した。ジャパンデンタルが浅間商事に依頼したのは、低コストで強固なセキュリティ対策を施すことが可能な製品だった。浅間商事は考えた末、ウォッチガードのUTMでセキュアな環境を整備することを提案した。

今回の事例は、ユーザー企業にメリットをもたらしたことに加えて、販社やメーカーにとっても新しい取り組みとなった。(写真は左から)浅間商事の鈴木淳一マネージャー、ジャパンデンタルの山崎浩信部長、ウォッチガードの堀江徹マーケティングマネージャサーバーをリプレースせずに構築
ウォッチガードのUTMは、簡単導入が売りになっている。モジュール形式で、必要なときにセキュリティ機能やネットワーク機能を搭載できることが強みだ。大企業だけでなく、システム担当者の少ないSMB(中堅・中小企業)でも、複雑な管理を必要としない。浅間商事の経営企画室管理チームの鈴木淳一・マネージャーは、「ジャパンデンタルさんが求めるセキュアな環境を整えるには、VPNの二重構成が必要。ウォッチガード製品であれば、一つのVPNでインターネットから分離して外部からのアクセスを完全に遮断したサーバーと、もう一つのVPNでそのサーバーとインターネットに接続する通常業務のサーバーを守るといったシステム構成を、1台で実現できると判断した」と説明する。
実際にUTMを導入し、テスト稼働したところ、「ウォッチガード製品が仮想化にも対応しており、PtoV環境を構築することにもつながった」(浅間商事の鈴木マネージャー)という。また、光回線の導入でネットワークの通信スピードも高めた。ジャパンデンタルの山崎部長は、「ランニングコストが下がって、しかも万全なセキュリティ対策が施せるようになった」と捉えている。テスト稼働が成功し、今年6月末から7月にかけて本格的に稼働を開始した。
デバイスからのアクセスを可能に
VPNを二重構成にしたのは、ジャパンデンタルが保有するデータが絶対に漏れてはいけないものだからだ。「今回のリプレースは一時的なもの。データを守るということに専念した。ただ、以前よりもセキュアな環境になったことを踏まえると、データを有効的に活用できる環境もつくらなければならない」と、ジャパンデンタルの山崎部長は話す。具体的には、ジャパンデンタルのスタッフであるコンサルタントが、顧客を訪問する際に、絶対に漏えいしてはいけないデータをどうしたら安全に持ち歩くことができるかということだ。山崎部長は、「デバイスの持ち出しを禁止していたが、VDIなどを視野に入れながら、外出先からもデータの閲覧が可能な環境を、いずれ整えていきたい」との考えを示す。
ウォッチガードにとっては、「当社の製品を使った新たなソリューションが創出された」(堀江徹・マーケティングマネージャ)という。浅間商事にとっても、「ウォッチガード製品で、セキュリティ対策に関するさまざまなニーズに対応できることがわかった」(鈴木マネージャー)としている。浅間商事に、ユーザー企業の業務内容を把握したインテグレーション力があったからこそ、今回のシステム構築が実現したといえる。(佐相彰彦)