NEC(遠藤信博社長)の新野隆副社長が今年4月、新社長に就任する。電機メーカーから社会インフラのソリューションベンダーへと舵を切った遠藤現社長の方針を継承し、着実な成長に結びつけるのが新野氏の役割だ。また、東京五輪後の国内経済後退に備えるため、海外事業の拡大も重要なミッションとなっている。(日高 彰)
昨年12月25日、NECは次期社長人事を発表し、代表取締役執行役員副社長兼CSO(チーフストラテジーオフィサー)兼CIOの新野隆氏が、今年4月1日付で代表取締役執行役員社長兼CEOに就任することを明らかにした。現在代表取締役執行役員社長を務める遠藤信博氏は同日付で代表取締役会長に就任する。
遠藤社長は2010年4月から現職に就いており、3か年の中期経営計画をちょうど2期実行して、新野新社長にバトンを渡す格好となる。遠藤社長時代の6年の間には、半導体事業のルネサステクノロジとの統合、パソコン事業のレノボとの統合、スマートフォン市場からの撤退などの事業改革が断行された。その結果、14年度決算では連結売上高が27年ぶりに3兆円を割り込むなど大きな痛みを経験したが、公共安全などの社会ソリューション事業に注力する方針が明確化され、収益性は改善、売り上げも底を打ち15年通期では増収を果たす見込みだ。
トップ人事を説明した記者会見の席上、遠藤社長は「(社会ソリューションへ注力する方針は)トップマネジメントが力を集結してつくったものであり、しっかりと次世代に引き継がなければいけない」「(事業基盤を)スムーズに渡していくことが絶対に必要」と、この6年で道筋をつけた事業の方向性を“継続・継承”することが重要と繰り返し述べた。遠藤社長自身の就任時は、矢野薫前社長(現・取締役会長、4月以降は取締役)からの10歳近い若返りだったのに対し、新野氏は遠藤社長と1歳違いで同年代だが、今回若返り人事としなかったのも、今は確実な事業継続が最も重要だからだとしている。
新野氏は1977年にNECに入社し、ほぼ一貫して金融向けの営業畑を歩んできた。CSOとして現在の中期経営計画の策定でも中心的な役割を果たし、遠藤社長の右腕として、現在のNECの方針をつくり上げてきた。自身の役割については、中期経営計画の実行、各事業部門が会社全体の成長に向け連携する「面としての経営」の強化などを挙げる。現在策定中の次期中期経営計画に関しては、「(注力分野を)もう少し絞り込んで、柱となる事業を明確化する」と話し、ビッグデータ、セキュリティ、SDNなど、これまで投資を行ってきたさまざまな分野のなかから、NECの強みとなる領域をより鮮明に打ち出していく考えを明らかにした。
国内の情報サービス市場は、企業のIT投資意欲に支えられ目下堅調だが、20年の東京五輪・パラリンピック後は縮小局面に入る恐れがあり、そのタイミングは新野新社長の任期中となる可能性が高い。新野氏は「その頃には海外売上比率30~40%をねらっていかないといけない」と話し、海外事業を伸ばすことが最も有効な対策との見方を示す。しかし、海外売上比率は少しずつ伸びてはいるものの、22.8%(15年度上期)と、約4割の富士通などと比べまだまだ低い。海外市場での成長は、遠藤社長も自分の任期でやり残した領域として挙げており、難しいミッションだ。会社の方向性はすでに定まっているだけに、新野新社長にはこれまで以上に業績面での期待が重くのしかかっている。

遠藤信博社長(左)と4月に新社長に就任する新野 隆副社長