仏シュナイダーエレクトリック(ジャンパスカル・トリコワCEO)は4月1日、同社がタイトル・スポンサーシップのパリマラソン(正式名:Schneider Electric Marathon de Paris)の実施に合わせ、ユーザー向けイベント「Life Is On Inovation Summit」を開催した。報道陣向けのセッションでは、基調講演にトリコワCEOが登壇。現在のエネルギーは持続不可能だとして、イノベーションの必要性を訴えた。会場の隣には、パリマラソンの受付とマラソングッズの展示会も行われていて、周囲は市民ランナーで賑わっていた。
今のエネルギーは持続不可能

ジャンパスカル・トリコワCEO 「現在のエネルギーは持続不可能である。別の道を模索しなければならない。持続可能なエネルギーを供給するには、イノベーションが必要だ」。基調講演に登壇したトリコワCEOは、冒頭で現在のエネルギーの問題点を指摘した。世界のエネルギー需要は、次に挙げる三つの要因によって増え続け、現状のままでは供給できなくなるという。
一つは、都市化。毎年7000万人ほどの人口が都市に流入しているという。二つ目は、デジタル化。スマートフォンをはじめとするさまざまなデバイスが普及し、今後も多様化していくと予想される。三つ目は、産業化。産業分野で消費されるエネルギーは、需要全体の3分の1を占めるとのこと。これが工業化の進展などにより、今後さらにエネルギーを消費するようになると予想される。2040年には総エネルギー需要が現在の1.5倍になるとした。
一方で、CO2の排出量を約半分に減らさなければならない。そのため、現在のエネルギーは持続不可能となる。
この問題を解消するには、「エネルギー活用を現在の3倍に効率化する」とトリコワCEO。同社の事業領域であるエネルギーマネジメントで、エネルギー問題を解消するというわけだ。
IoTやAIでエネルギー効率化
発電から消費までの過程において、現時点でも効率化できる部分は多い。トリコワCEOが一例として挙げたのが、ビルだ。「多くのビルはエネルギー効率が悪い。約60%のビルが省エネに取り組んでいない」。そこでIoTである。センサによってエネルギー消費の動向を把握すれば、効率化を進めることができる。「使っていない電気は消せばいい。とてもシンプルだ」とトリコワCEO。センサなどを導入するには初期投資がかかるが、「3年から5年で回収できる」と自社での取り組み実績を挙げながら、IoTの投資対効果を説明した。
また、発電に関しても、センサの活用が進む。例えば、風力発電の設備が故障する前に、センサから集めたデータをもとに修理するといったことに活用できる。「エネルギーの将来を考えたら、IoTの活用は不可欠。センサの活用には当社に多くの実績があり、今後も注力していく」とのことである。
センサからデータを集め、その分析から故障前に対処するといった行動につなげるには、機械学習などのAI(人工知能)が不可欠である。シュナイダーエレクトリックでも、機械学習に取り組んでいる。機械学習の応用範囲は広い。
「センサによってさまざまなデータが取得できるため、これからのエネルギー業界では、エネルギーの活用や運用のあり方が大きく変わっていく」と、シュナイダーエレクトリックとしても機械学習は注目分野の一つだという。
地球規模で環境を考えると、温暖化を防がなければならない。それにはIoTやAIも重要な要素となる。トリコワCEOは最後に「エネルギー消費の効率化への取り組みは、あまり進んでいない。テクノロジーを積極的に活用し、効率性を上げることに貢献していく」と語り、講演を締めくくった。

9年連続でトッププロバーダーとして認定された天気予報サービスのデモンストレーション
シュナイダーエレクトリックのソリューション展示会場には、約1000人のユーザーが来場した。同社が空気の制御で特許をもつデータセンターソリューションや、家庭向けの電源管理ソリューションなどを展示。また、同社が提供する天気予報サービスのデモンストレーションも行われていた。ちなみに、シュナイダーエレクトリックは4月1日、同社の天気予報サービスが、天気予報の精度を調査するFrecastWatch.comから9年連続でトッププロバーダーとして認定されたことを発表した。精度の高さから、同社の天気予報サービスは農業などにも活用されている。(畔上文昭)
パリマラソンのスポンサーを2019年まで延長
仏シュナイダーエレクトリックは4月1日、タイトル・スポンサーシップを2019年まで延長したと発表した。これにより、パリマラソンの正式名称は、2019年まで「Schneider Electric Marathon de Paris」になる。トリコワCEOによると、パリでは「パリマラソン」ではなく、「エレクトリックマラソン」と呼ばれているという。また、「2年以内にパリマラソンをカーボンニュートラルな大会にすることを目指す」とトリコワCEOは語った。

パリマラソンに参加した編集部の畔上文昭。タイムは3時間21分36秒だった
今年のパリマラソンは4月3日に開催された。参加人数は公式発表によると57000人。定員がないため、申し込めば全員参加できる。スタート地点は凱旋門前のシャンゼリゼ通り。石畳となっているところは少し気になるが、ほぼフラットなコースなので走りやすい。セーヌ川やエッフェル塔などを眺めながら走り、凱旋門前がゴールとなる。本紙編集部からは、本レポート担当の畔上文昭が参加。3時間21分36秒のタイムで、パリの街を気持ちよく駆け抜けた。