エレコム(大阪市、葉田順治社長)は、組み込みソフト開発事業を拡大させる。9月1日に開発拠点「大和技術開発センター」(神奈川県大和市)を開設するとともに、関連する事業で50人の新規採用を目指す。一部は大和技術開発センターに配属し、開発能力の向上を図る。ハードウェアをもたないSIerやソフト開発会社(ISV)との連携も推進し、販売力やサポート力の強化を進めていく方針だ。(安藤章司)
パソコン周辺機器で有名なエレコムだが、ここ10年余りの時間と資金を投じて組み込みソフトや電子機器の開発ビジネスを構築してきた。

東京都内で組み込みソフト事業の説明会を開く
エレコムの梶浦幸二常務(右)と鈴木浩之取締役
具体的には食品工場や冷凍倉庫といった過酷な条件のもとでも確実に稼働する堅牢タブレット端末の独自開発や、小売店やホテル向けのデジタルサイネージ(電子掲示板)、飲食店で使うタッチパネル式のPOS端末など、顧客の用途に合わせたカスタマイズやサポートを強みとする。昨年度(2016年3月期)の組み込みソフト/電子機器関連の売上高は約70億円だったのに対し、今年度(17年3月期)は前年度比3割増の90億円を目指す。
Wi-Fi機器やNAS(ネットワーク接続型ストレージ)、防犯/監視カメラ、ネットワーク機器など、多彩なIT機器を商品ラインアップにもつエレコムだが、これらを法人向けに販売するには、どうしてもカスタマイズ対応が発生する。
そこで、ここ10年余りの間にグループ会社に迎え入れてきたロジテック、ハギワラソリューションズ、日本データシステム(JDS)をはじめとする組み込みソフトや電子機器の開発に強いグループ企業群が中心となって、「法人顧客の課題を解決する提案やカスタマイズ、製品開発を行う」(梶浦幸二常務取締役)ことによって、法人向けビジネスの拡大につなげてきた。
9月1日付で神奈川県大和市に開設する「大和技術開発センター」も、加賀電子のグループ会社で産業機器の研究開発を手がけるワークビットの事業を譲り受け、その事業拠点を開発センターに改装する。国内外の大手電機メーカーと競合する可能性があるものの、一方でIoT/ビッグデータ分析の需要増加の流れのなかで、組み込みソフト開発や電子機器のカスタマイズの引き合いは「かつてないほど高まっており、顧客のニーズに追いつかないほど」(鈴木浩之取締役)と、うれしい悲鳴を上げる。同社では、関連事業に従事する人材を直近3か月あまりで15人ほど採用。早い段階で累計50人規模を新規で採用することで人手不足に対応する。
同時にハードウェア商材をもたないSIerや、業務ソフトを開発するISVなどとの連携も強化していく。現行のタブレット端末やパソコン、周辺機器の多くは販売量が多いコンシューマ向けの機材をベースにビジネス用途に転用したケースが多く、機器の仕様やOSが変わりやすい。
エレコムでは法人用途に特化した機器を強く意識して開発しており、仕様や補修部品、代替機の継続性を重視。さらにエレコムならではの小回りによさ、価格的な優位性が業務システムを開発するSIerやISVから評価され、販売パートナーの幅も広がっている。