ブロックチェーン推進協会(BCCC、平野洋一郎理事長、インフォテリア社長)は8月17日、ブロックチェーンの普及促進と市場の立ち上げを担うエンジニアやビジネスパーソンを養成すべく、ブロックチェーン大学校を開校した。「インターネット以来の技術革新」ともいわれるブロックチェーンだが、正真正銘の黎明期にあることから、体系的な情報収集や教育の機会はほとんど存在しなかった。そのため、まだまだ技術者も少なく、当然ながらブロックチェーンを活用した新しいビジネスを企画できる人材も著しく不足している。ブロックチェーン専門企業が中心となって立ち上げた業界団体であるBCCCは今年6月末、この状況を打破すべく、国内初の試みとして体系的なブロックチェーン教育の場を設ける方針を打ち出していた。果たして、ブロックチェーンビジネスの市場創出をどの程度後押しすることになるか――。(本多和幸)
シリコンバレーのカリキュラムを日本向けに
ブロックチェーン大学校は、受講生の対象を「ブロックチェーンを利活用するエンジニア」、もしくは「ブロックチェーンの導入を検討する金融機関・企業等の担当者」と規定している。また、BCCC会員企業に所属していることも受講の条件だ。第1期~第3期までの3クールで、各定員30人、計90人程度にまずは入門編ともいえる講座を受講してもらう。第1期は8月17日にスタートした。第2期は9月13日に開講することが決まっており、すでに受講者の募集も始まっている。各期とも、1回2時間、全8回の講義が予定されている。

第一期生としてまずは30人がブロックチェーンの基礎を学ぶ
カリキュラムの提供と講師の派遣は、BCCC会員企業のビットバンクが担う。カリキュラムは、米ブロックチェーン・ユニバーシティが提供する教育プログラムを同社が独自にアップデート、ローカライズした。内容は、ブロックチェーンのオリジンであるビットコインについて、歴史や技術・サービスの詳細を学ぶというものだ。また講師は、米国出身のビットコイン研究者で、ビットバンク技術顧問のジョナサン・アンダーウッド氏が務める。BCCC副理事長であるテックビューロの朝山貴生社長は、「ブロックチェーンはビットコインで生まれた技術。ビットコインがどのように始まって、どう改善されてきたのかを学ぶことで初めて、ブロックチェーンを深く理解できる。シリコンバレーで定評のあるカリキュラムをビットバンクが日本向けにもってきてくれたので、非常に内容の濃い講座になるだろう」と自信をみせる。

カリキュラムを提供するビットバンクの廣末紀之CEO(右)と、
講師を務めるジョナサン・アンダーウッド技術顧問
ビットバンクは過去2年程、ブロックチェーンやビットコインの勉強会を継続的に開催してきた。市場が拡大するには、ブロックチェーンを活用したアプリケーションが世に出て浸透していくというプロセスが必要で、そのためにはエンジニアの質と量が重要だと考えたからだという。しかし、そこで大きな課題が浮き彫りになった。同社の廣末紀之CEOは、「ジョナサンと私の二人で全国をまわり、手弁当で頑張ったが、単発の勉強会ではコミュニティも広がらず、限界があることを痛感した。産業の拡大に貢献するために、きちんと体系だった情報を伝える場をどうつくるか模索してきたが、BCCCが誕生してそこに加盟したことで道が開けた」と話す。
今回、第1期から第3期にわたって提供するカリキュラムは、入門編の「ブロンズ」コースと位置づけられる。ビットバンクは今後、「シルバー」「ゴールド」といった上級コースのカリキュラムの作成も手がけたい意向だ。「ブロックチェーンの応用や、これを活用した新しいビジネスの企画のためのスキルも身につけられるものにしたい」と、廣末CEOは意気込む。
ブロックチェーン大学校出身者が市場を立ち上げる
BCCCの加盟企業は、今年4月の発足以降増え続けており、ブロックチェーン大学校開校の時点で、80社に達した。開校式で平野理事長は、「当初、BCCCの会員としてはブロックチェーン技術のプロバイダが多かったが、SIerやブロックチェーンの活用を模索するユーザーなども加盟し始め、そうした属性の企業からの引き合いも増えている」と説明した。実際に、金融分野の大手ユーザーである大和証券グループ本社や、金融分野で実績がありブロックチェーンの実証実験などで先行している大手SIerの電通国際情報サービスもBCCCに加盟している。

(左から)平野洋一郎 理事長、朝山貴生 副理事長、兼元謙任 理事
ブロックチェーン大学校第1期の受講生は、ブロックチェーン技術のプロバイダ所属エンジニアが大半を占めているというが、平野理事長は、「ブロックチェーン大学校の開校がBCCC加盟企業の増加を後押ししている側面は間違いなくある」との見解も示した。
また、ブロックチェーン大学校の運営を担当するBCCC理事で普及委員会の副委員長である兼元謙任オウケイウェイヴ社長は、同じく開校式の挨拶でブロックチェーンのポテンシャルの大きさを強調しつつ、「ブロックチェーン大学校で学んだ人たちが市場を立ち上げていくだろう」との期待を表明。BCCCが取り組んでいるブロックチェーンコミュニティの拡大について、手応えを感じている様子をうかがわせた。