情報セキュリティソフトウェアのデジタルアーツ(道具登志夫社長)は10月5日、広島市内で中国・四国地方を担当する「中四国営業所」(広島市)の「開設記念セミナー&パーティ」を開いた。販売パートナーや自治体関係者ら約50人が参加。デジタルアーツの同地区における市場性や拠点を置く理由、全体の製品戦略などを説明した。道具社長は、「中国・四国地区のみなさんに国産セキュリティベンダーの手厚いサポートと安心を届ける」とアピール。販売パートナー向けの支援を拡充するとし、協力を要請した。(取材・文/谷畑良胤)
企業向け販売を増やす

道具登志夫
社長 開設記念セミナーの冒頭、道具社長が登壇し、1995年6月の会社設立からの同社の紹介と中国・四国地区に拠点を構えた理由などについて説明した。「同地区は以前、関西・中四国営業所が出張ベースで担当していた。それ以前は九州営業所がみていた。ところが最近は、中四国地区の販売パートナーのおかげで伸長率が高く、当社にとって魅力的なマーケットになってきた。一方で、当社のウェブセキュリティソフト『i-FILTER』は知っているが、他の製品の認知度がまだまだ低い」と、成長余地が大きいとして広島市内に拠点を置き、専従営業担当者を配置したと、営業所開設の理由を説明した。
同社は2000年7月に国産初のウェブセキュリティソフト「i-FILTER」を開発し、コンシューマと法人向けに販売を開始した。07年2月には、誤送信対策のメールセキュリティソフト「m-FILTER」を発売。ウェブとメールフィルタリングメーカーとしての地位を確立した。12年7月には、現在の売れ筋製品になっている暗号化・追跡ソリューション「FinalCode」を出し、「フィルタリングから情報セキュリティメーカーへと変貌を遂げた」(道具社長)。
セグメント別売上構成比は、企業向けが56%、公共向けが35%、家庭向けが9%と法人向けが主流になっている。中四国地区では、自治体と公立学校を中心に「i-FILTER」と「m-FILTER」の引き合いが多いものの、「企業向けの販売比率が低い。『FinalCode』を含めたソリューションで、企業向けを増やすと同時に、全体の底上げをしたい。当社は五輪イヤーの20年までに現在の2.5倍になる100億円の売り上げを目指している。みなさんの力を借りたい」(道具社長)と、販売パートナーに訴えた。

エンタープライズ・
プロダクト・
マーケティング部
瀬川明宏
部長 続いて、同社エンタープライズ・プロダクト・マーケティング部の瀬川明宏部長が、製品の特徴やソリューション展開例などについて説明した。瀬川部長は「4年前、データ保護の最後の砦となる機密情報漏えい対策ソフト『FinalCode』を出したことで、外部の高度標的型攻撃対策に加え、内部セキュリティ対策も実現するための情報漏えい対策ソリューションが完成した。『i-FILTER』に関していえば、教育機関に3万機関、企業・公共団体で7300社・団体、スマホ版が20万ライセンスを販売した」と、これまでの実績について話した。
また、瀬川部長は、「標的型攻撃は過去最大の被害をもたらしている。もっとも多い攻撃方法はメールに添付ファイルを送信するケースだが、当社の『m-FILTER』はメール無害化機能を搭載し評価を得ている。中四国営業所の開設に合わせて、機能を絞り大幅に価格を下げた『FinalCode Express Edition』の販売を開始した。各販売パートナーの製品と一緒に顧客の要望に応じたソリューション展開がしやすくなった」と、営業所の担当者と連携し販売パートナーの営業や提案により深く関わり、ソリューションを提供できるようにするという。
連携ソリューション構築を

営業部
中四国営業所
山根康志
所長代理 開設記念セミナーの最後には、営業部で中四国営業所の山根康志所長代理が、「より密接な関係をつくりたい」と、同営業所と販売パートナーが連携した販売戦略を語った。「旧関西・中四国営業所(10月で名称を「関西営業所」に変更)から月の半分以上を中国・四国地区の営業に費やした。他の競合メーカーは、3か月に1回程度しか顔を出さないという声も聞かれる。常駐拠点ができたことで、これまで以上に数多く歩き、当社製品を知ってもらう活動を行う」(山根所長代理)と、顧客と販売パートナーに近い場所で要望を聞き、ソリューション提供の道筋をつくることを明言した。
山根所長代理によれば、同地区の売上合算は、九州地区全体と同等にあり、急成長している。中国・四国地区だけで、14年3月期に比べ17年3月期は、売上高で2.4倍、新規売上で4.3倍になる見通しだ。顧客別の売上比率では、文教、公共、企業で各3分の1ずつだが、「来年度(18年3月期)は企業比率を半分にしたい」(同)と、次の営業方針を掲げた。
まずは、「地産地消」。地域に根ざした展開をする。次に「パートナービジネスの拡充」として、システムインテグレータ(SIer)などが得意とする領域や製品と連携したものを生み出し、販売パートナーの売り上げアップを図る。最後には「プロダクト販売からソリューションビジネスへ」とし、企業個別の訪問などを積極化し、販売ノウハウや見込み客の発掘を行う。