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キリバ・ジャパン 経理部門のリモートワーク需要で引き合い急増 ビジネスパートナー増強で需要をつかむ

2021/03/18 16:30

週刊BCN 2021年03月22日vol.1867掲載

 キリバ・ジャパンは、国内のビジネスパートナーの拡充を進めている。同社は企業の経理部門と銀行の取引を自動化する銀行EDIに相当するサービスをSaaS方式で提供しており、コロナ禍に見舞われた2020年は経理部門のリモートワークの需要拡大が追い風となって「引き合いの件数が前年比で3倍余りに増えた」(キリバ・ジャパンの小松新太郎社長)という。だが、直販指向が強かった同社は、自社の人員が既存案件で手一杯となり、急増する引き合いに応えられるだけの販売体制が十分に構築できていない課題が浮き彫りとなった。

小松新太郎 社長

 足元のビジネスパートナーは、セゾン情報システムズと、昨年8月に新しく加わったアビームコンサルティングなど数社のみ。セゾン情報システムズとは同社が開発するデータ連携ツール「DataSpider(データスパイダー)」シリーズを使って、キリバのサービスとユーザー企業の経理システムをつなぎ込む分野で協業している。アビームコンサルティングはSAPをはじめとする主要ERP(基幹業務システム)の構築に強く、ERPとキリバを連携させる分野などで力量を発揮しているという。

 2020年の新規顧客数は前年比で1.6倍にしか増えておらず、引き合いの件数の多さほど実受注が進んでいない。すでにキリバ・ジャパンの販売要員の稼働率が高止まりしていることを受けて、「パートナーとの協業拡大を意欲的に進めていく」(小松社長)ことで、需要の取り込みに力を入れる。

 キリバは2000年にフランスで創業。現在の本社は米国に置き、世界で約2200社のユーザー企業の経理部門と、世界の主要銀行約1100行のオンラインシステムとの接続実績を持つ。オンラインバンキングの接続口(API)は銀行ごとに異なるため、従来、ユーザー企業は個別にAPI接続の仕組みを構築したり、銀行EDIで接続するといった選択を行っている。また、インターネットバンキングの操作画面から手作業で取り引き操作を行うケースもある。キリバは銀行ごとのAPIの違いを吸収する役割を担っており、ユーザー企業はキリバに接続しさえすれば、国内外の主要銀行と自社の経理システムを容易に接続することが可能になる。

 経理部門の多くは銀行との接続用の端末を個別に用意し、物理的なセキュリティが保たれた職場に固定しているため、リモートワークへの移行が困難な部門とされてきた。キリバは信頼性の高い情報セキュリティ機能を実装するとともに、送金する場合の申請と承認のワークフローの徹底、銀行残高をリアルタイムに複数の担当者で確認するなどして透明性を高め、安全を保ちながらリモートワークを行うことができるという。コロナ禍が収束した後も事業継続の観点から経理部門のリモートワーク需要は伸びると見られており、国内ビジネスパートナーの増強を通じてビジネス拡大を目指す。(安藤章司)
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