テラスカイのグループ会社で、SAPのビジネスアプリケーションのクラウド移行などを手掛けるBeeXが、新たなビジネスを本格化させる。SIのノウハウを生かしたクラウドマネージドサービスをプラットフォーム化し、チャネルパートナー経由で再販することで「スケールするストックビジネス」を目指そうと考えているのだ。SIerの新しい成長モデルになるか。(本多和幸)
マネージドサービスを
プラットフォーム化
基幹系システムのモダナイズやクラウド移行の専業会社として2016年3月に発足したBeeXは、AWSをはじめとする大手クラウドサービスとSAP ERPの両方に精通した貴重な存在としてビジネスを拡大してきた。19年3月には親会社であるテラスカイのクラウド技術者が約40人同社に移籍するなど、直近2年間ほどで社員数は約5倍に増えた。
小崎史貴 マネージャー
一方で、現在こそ需要が旺盛であるものの「SIビジネスの範疇だけでは安定した成長を継続できないという課題意識があった」と、同社ビジネス開発推進本部営業開発部の小崎史貴・ビジネスディベロップメントマネージャーは説明する。
そこで同社がクラウドSIのノウハウを生かしたストックビジネスの確立を目指して昨年7月に立ち上げたのが「BeeXPlus」というクラウドマネージドサービスだ。クラウドのライセンス再販、導入や活用・展開支援、監視・運用といったサービスをワンストップで提供するもので、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudの大手3サービスに対応している。小崎マネージャーは「マルチクラウド対応であることは一つの特徴だが、これだけでは普通のサービスとも言える。当社がBeeXPlusを通して確立しようとしているのは(パートナーエコシステムの力で成長していく)メーカー的な立ち位置のビジネスだ」と話す。今春から、このパートナーエコシステムの拡充と活性化に本格的に取り組む。
具体的な施策としてはまず、BeeXPlusをプラットフォーム化し、ユーザーがクラウドを活用する際に必要となるさまざま機能を柔軟に選択できる環境を整える。サードパーティーベンダーと協業し、セキュリティ商材・サービスやIoTプラットフォーム、AI関連サービスなどもマネージドサービスのメニューとしてラインアップする構想だ。「サードパーティーとの協業にはOEM提供や外部連携などいろいろなパターンを想定しているが、マーケットプレースのようなイメージでサービスを利用したり、ラインアップを拡充できる環境をつくりたい」としている。
既にいくつかのパートナー企業と製品連携の話は進んでいる。特にセキュリティの領域は目下の注力ポイントだ。小崎マネージャーは「クラウド活用を前提とした包括的なセキュリティ対策はニーズが大きく、外資系有力ベンダーとタイアップしてそれに応える。セキュリティの状態を可視化して、ガバナンスやコンプライアンスを担保し、ハイブリッドクラウドにも対応できるサービスを近く発表する。場合によってはオプションになるが、CASBやSIEMの提供も視野に入れている」と説明する。このほか、IDaaSやWAF、IoT/AIのプラットフォームサービスなどでも「ビッグネームが参画してくれる流れができている」と手応えを語る。
ローカルキングに
再販してもらい成長を加速
もう一つの施策が、BeeXPlusの販売パートナーの拡充だ。販売パートナーには、BeeXPlusのメソッドとスキームを再販してもらうイメージだという。クラウド技術者を育てる教育プログラムを提供し、パートナーが地元の案件をワンストップで手掛けられるサービス体制の構築を目指す。特に“ローカルキング”と呼ばれる地場の有力SIerとの協業を重視する方針で、仙台、静岡、大阪、岡山、福岡、鹿児島などで実際にパートナー開拓が進みつつある。小崎マネージャーは次のように説明する。
「クラウド活用における地方市場の潜在的なニーズは非常に大きい。しかし、自社の拠点を広げるという発想ではそのニーズを十分に発掘できないとも考えている。地場の有力SIerは既存の顧客基盤がしっかりしている一方で、クラウドを活用したDX支援など新しいビジネスに舵を切っていかなければならないという課題も抱えている。BeeXPlusのパートナーエコシステムに参画してもらうことでそうした課題の解決につながるし、彼らとの協業が拡大していくことで、当社としても手離れよくストックが蓄積していくビジネスモデルをつくることができる」
BeeXはクラウドマネージドサービスのプラットフォーム化と再販パートナーの拡充によるビジネスのスケールを前提に、パートナープログラムの整備も進めている。最終的には「地域のDXに貢献するサービスとして市場に浸透させていきたい」意向だ。