クラウドPBXサービスのDialpad Japan(ダイアルパッドジャパン)は、コロナ禍の前に比べて国内ユーザー数が2倍余りの約1400社、約6万5000ユーザーに達した。リモートワークの急拡大に後押しされるかたちで、企業の電話対応や受付業務をリモートで行いたいという需要が拡大。同社が提供するクラウドPBXサービス「Dialpad(ダイアルパッド)」の販売増につながった。同サービスは、コンタクトセンターの機能が充実しているとともに、オフィス系ソフトや顧客管理、営業支援系のSaaSアプリとの連携のしやすさがユーザー企業から高く評価された。
(安藤章司)
リモートワークを阻む原因の一つにオフィスに据え付けてあるオンプレミス型のPBX(構内交換機)とビジネスフォンが挙げられる。大代表や部門代表の電話、受付業務用の電話番をするために出社するのは効率が悪いため、多くの企業がクラウド型のPBXサービスを導入し、自宅や出先のスマホやパソコンで電話を受けられるようにした。
Dialpad Japanは米ダイアルパッドの日本法人で2016年に国内市場に進出。ソフトバンクが国内総代理店となって販売しており、コロナ禍前の20年1月は約600社、約2万5000ユーザーだったが、リモートワーク需要を掴んだことで顧客数を一気に2倍以上に増やした。
競合がひしめくクラウドPBXサービスのなかで躍進できた要因として、米ダイアルパッドのアジア太平洋地域ゼネラルマネージャーで日本法人社長を兼務する安達天資氏は、「オフィスでよく使うソフトとの相性のよさ」を挙げる。「Microsoft 365」や「Google Workspace」といったオフィス系ソフトや「Salesforce」や「Zoho CRM」などの顧客管理、営業支援系、「Slack」をはじめとする情報共有、チャットが主要なSaaS系アプリに組み込んで使えるとともに、ダイアルパッド自身のサービスとしてコンタクトセンターやマルチデバイス対応の機能を提供しており、一般的なオフィス用途から受付業務、センター業務まで幅広く対応できることを強みとしている。
安達天資 社長
また、新機能の拡充にも力を入れており、今年9月には東京「03」や大阪「06」など地域を示す番号に対応するオプションサービスをスタート。これまでの地域を示さない「050」といった番号だけでなく、既存の代表電話や部門代表の固定電話を変えずにDialpadを導入することが可能になる。これとは別に現在、国内ではまだ正式にサービスを提供していないビデオ機能や音声分析機能も「22年の早い段階で国内向けのサービスを始める」(安達社長)予定だ。
音声分析では、AI技術を使って会話を書き起こしたり、感情の変化を読み取ったりできるようにする。例えば、コンタクトセンターや受付業務で「価格」という単語が出てきたときに「料金表」を画面に表示して担当者の業務を効率化させたり、苦情につながるような単語を抽出して管理者に報告するといった用途に応用できる。電話だけでなく、チャットやSNS、メールといった複数のコミュニケーションチャネルを統合し、AIによる言語解析で業務の効率化や顧客体験の向上に役立つ機能として売り込んでいく。
販売面では「ユーザー企業からの指名買い、ユーザー社内の情報システム部門が自力でオフィスソフトなどSaaSアプリと連携させて使うケースがこれまでは比較的多かった」と安達社長は話す。今後、ビデオやAIといった機能が追加され、より複雑なシステム構築能力が求められることから「SIerやオムニチャネル構築に強いビジネスパートナーとの関係を強化」することで、向こう数年はユーザー数を倍々で増やしていくと意欲的だ。