アイティフォーは、強みとする地銀向けのローン手続きの非対面化の推進や、オンライン決済サービス会社の設立、ブロックチェーン技術を活用した証明書発行の事業化など、非対面・非接触の領域への投資を加速させる。オンライン決済サービスでは、7月7日付で決済代行を手掛ける事業子会社シディを立ち上げた。非対面・非接触を成長領域と位置付け、本年度(2023年3月期)は4億円近い研究開発費を投じて競争力を高める。
地銀向けでは、住宅ローンや無担保のカードローンの手続きをオンラインで受付、契約ができる「WELCOME(ウェルカム)」の引き合いが増えており、直近では西京銀行(山口県周南市)が採用したと7月1日付で発表。西京銀行の顧客は手持ちのスマートフォンでローンの申し込みができるようになる。店舗に出向いて対面での申し込みをするのが煩わしいと考える顧客の満足度向上が見込める。
佐藤恒徳 社長
オンライン完結のサービスは競合も多いが、アイティフォーでは、ローン手続きの基幹業務システムに相当する「SCOPE(スコープ)」と組み合わせて、「受付からバックヤードの業務処理まで一気通貫のシステムを提供する」(佐藤恒徳社長)ことで差別化につなげる。
非接触決済サービスを巡っては、スマホ決済やICカード決済などに対応した端末「iRITSpay(アイリッツペイ)決済ターミナル」の販売が好調で、昨年度の累計受注台数は前年度比49%増の8万2000台余りに達した。今期も引き合いは堅調に推移する見込み。
一方、新会社のシディでは、非対面の決済サービスを提供することでiRITSpay決済ターミナルを補完していく。同社ではネット通販システム「ITFOReC(アイティフォレック)」も開発しており、「オンライン通販と非接触、非対面の決済サービスの相乗効果でビジネスを伸ばす」と佐藤社長は意気込む。
ブロックチェーン技術を活用した証明書発行では、3月から九州工業大学とブロックチェーンに強みを持つchaintope(チェーントープ、福岡県飯塚市)とともに大学の履修証明書のデジタル化や自治体との連携に関する実証実験を推進。ブロックチェーン技術を基盤に電子証明書の真正性・有効性を担保するトラストサービスに仕上げていくとともに、決済サービスと組み合わせ、非対面・非接触で証明書をやりとりできる基盤づくりに力を入れる。
これらの新領域でビジネスを伸ばすための人的投資、社内設備の投資を行うことから、本年度の全社の連結営業利益は前年度比5.2%減の28億円と減益を見込むものの、新規案件の増加で連結売上高は前年度比8.7%増の185億円の見通し。3カ年中期経営計画の最終年度に当たる24年3月期は売上高210億円、営業利益32億円を目標に据える。
(安藤章司)