NESICホールディングス(NESIC-HD)グループは、2025年7月1日から本格的に事業をスタートさせた。NIerのNECネッツエスアイと、SIerのNECネクサソリューションズが、中間持ち株会社のNESICホールディングス傘下に入り、NIとSIを融合させたビジネスを展開する。8年にわたってネッツエスアイの経営を率いたのち、NESIC-HDのトップに就いた牛島祐之社長は、「短納期で素早く最新のデジタルサービスを利用できる『クイック・ライト』なITサービスを軸にビジネスを伸ばしていく」方針を打ち出す。
(取材・文/安藤章司)
SaaSやクラウドを積極的に活用
今回の事業会社再編の狙いは何か。
NESIC-HDグループの再編の狙いをキーワードで表すならクイック・ライトだ。短納期で素早く最新のデジタルサービスを提供する事業体を目指している。
牛島祐之 社長
現在、多くの業務システムがSaaSやクラウドサービスで補えるようになり、個別SIでシステムを構築する割合が減ってきている。NESIC-HDグループでは、「外部のSaaSやクラウドを活用して、素早く、手軽に最新のデジタルサービスを使いたい」という顧客ニーズに応えるビジネスモデルを軸に据えている。
クイック・ライトとは、中堅・中小企業向けのデジタルサービスのことを指しているのか。
必ずしもそうではない。大企業ユーザーでも例えば基幹システムの部分は従来型のSIでしっかりつくり込み、それ以外の部分はクイック・ライトに外部のSaaSやクラウドを活用する動きが増えている。もちろん中堅・中小企業ユーザーでも同様の需要があることから、企業規模で分けるのではなく、クイック・ライトな領域を当社グループが担い、個別SIでシステムをつくり込む需要はNEC本体が担う役割分担を想定している。
全国の地域ビジネスを重視
ネクサソリューションズは東名阪中心のビジネスから全国の中堅・中小企業ユーザーを担当する役割に変わったのか。
今回の再編の一環としてNEC本体から中堅・中小企業向けSIビジネスを担当していた人員が、数百人規模でネクサソリューションズに合流している。これにより、従来の東名阪中心のビジネス体制から全国対応へと方針を転換した。少子高齢化や都市部への人口集中で地域に十分なITサービスが行き届かない懸念が高まっていることを受け、地域の顧客にしっかりとITサービスを届ける取り組みの一環でもある。
地域ビジネスという文脈において、NEC本体が手掛けている消防・防災・自治体向けのビジネスをで承継することも検討している。
ネッツエスアイは、中堅・中小企業向けのビジネスは多くない印象がある。
ネッツエスアイは通信キャリア向けのネットワーク構築ビジネスや、通信設備の設置工事の比率が高いため、中堅・中小企業向けのビジネスは全体の5%程度にとどまっている。SaaSやクラウド、AIを活用したDXソリューションビジネスも手掛けているが、こちらも中小企業向けというよりは、中堅以上の大手ユーザー向けの比率が高い。見方を変えればネクサソリューションズとはビジネスの重複がほとんどなく、互いに補完し合える関係にあると言える。
年商1兆円、海外ビジネスも視野
ネクサソリューションズとネッツエスアイの間で、まずはクロスセルを始めることで相乗効果を狙うのか。
ネクサソリューションズの顧客にはネッツエスアイのネットワーク構築サービスを提供し、ネッツエスアイの顧客にはネクサソリューションズのシステム構築の提案を行うといったクロスセルは、すでに開始している。同時にSEや営業のリソース、セキュリティーといった、これまで個別に運用してきた部分を一体的に運用することで、再編による規模のメリットも追求していく。
今は中間持ち株会社の体制だが、将来的に両社が統合する可能性はあるのか。
その可能性はあると思う。いきなり統合すると混乱を招くおそれがあるため、まずは両社が相乗効果を発揮するための推進役を担うのが持ち株会社の役割であると捉えている。
NEC本体から今後移管を検討しているものも含めて、今回の再編でNESIC-HDグループの年商はどれくらいになるのか。
検討中のものも含めて年商5000億円超、人員数は1万人超の規模になる見込みだ。現在は両事業会社ともに国内ビジネスが中心だが、今後は事業の柱となるクイック・ライト領域において、海外市場への進出も検討していく。当社の事業領域と相乗効果が見込めるのであればNESIC-HDグループとしてのM&Aも視野に入れ、将来的にはクイック・ライト領域を強みとする年商1兆円規模のITベンダーへの成長を念頭に、ビジネスの拡大を推し進めていく。