中古パソコン1台が、国際理解を深め、経済発展に結びつく――。神田さんは、このような可能性を信じて、中古パソコンをインドネシアに寄贈する活動を始めた。「インドネシアは、人口2億2500万人の資源豊かな大国。われわれベンチャーが寄贈する中古パソコンでも十分活用してもらえる」
現地のパソコン産業を壊さないよう、先方の文部省を通じ、寄贈先は学校施設のみに限定している。年間50万台の寄贈が目標だ。「新品のパソコンは、どんなに安くても最低4万円近くする。庶民にとっては高嶺の花。高等教育機関で使っているパソコンでさえ、インテル286クラス。ペンティアムクラスのパソコンが揃えば、ソフト開発などビジネスの可能性が大きく広がる」
「しかし、国民の約9割がイスラム教徒で、一部の宗教学校は閉ざされた雰囲気がある。諸外国からは『過激派養成学校』ではないかとの指摘もあるが、実際に行ってみると、大半は違う。パソコン、インターネットで世界と通じる情報の窓口ができれば、宗教の違いはそのままにして、あの子供たちと共に国際社会を築けるようになるのではないか」同国にビジネスの足場を築くために始めた中古パソコンの寄贈。奥へ踏み込めば踏み込むほど、ビジネスとは違う世界が見えてくる。
プロフィール
(かんだ ごろう)1972年、東京都生まれ。00年、ボストン大学理工学部卒業。01年、起業。02年9月からインドネシアに向けて、学校用中古パソコンの寄贈活動を開始。年度内(03年3月期)10万台、来年度50万台の寄贈を見込む。中古パソコンは国内産廃事業者から調達する。諸経費は先方政府の助成金でまかない、同社は、現地でのソフト開発などのビジネスを手がける。今年度売り上げは15億円を見込む。