初めて自分のビジネスを立ち上げた。簡単なプリント基板をEC(電子商取引)で受注する会社だが、「地に足がついた」満足感がある。学生の時から起業家向けスクールに通い、「起業するために社会人になった」と話す。急成長した専門商社のミスミで商取引の基礎を学び、その後、独立してインターネットを使った市場分析などをした。マーケティング関連の本も書いた。
だが、しっくりこない。パソコンで市場データの分析をして、お金をもらう。今は統計ソフトの性能が上がっており、作業は半自動で進む。「新しい発見はあったが、地に足がついた感じはなかった」。“ECで”とは言え、プリント基板をつくる仕事は地味だ。簡単な基板を少数ロットで受注して、量産はしない。しかも、2-4層のローエンドな製品である。携帯電話の基板でも軽く10層ある。
「最初はこれでいい。どんなによいアイデアでも、資本力のある企業に潰されてしまっては意味がない。ニッチなサービスを根気よく積み重ねることで、大企業による参入を排除できる」今後は、基板の上に乗せる電子部品もECで調達する。設計や実装もECでできれば、回路図一枚をもとに、動作可能な状態までワンストップで仕上げられる。「ニッチだが、満足感があり、この先の広がりが待ち遠しい」
プロフィール
田坂 正樹
(たさか まさき)1971年、長野県生まれ。95年、多摩大学経営情報学部卒業。同年、ミスミ入社。大学2年の頃に、起業志向の学生向けの「ミスミ・イノベータースクール」に通う。入社後は、パソコン部品や半導体の販売に従事。99年、フリーのコンサルタントとして独立。02年4月、インフロー起業。03年4月、プリント基板の製造をECで受注する「P板ドットコム」事業を立ち上げる。著書に「事例でわかるインターネット・マーケティング」(毎日新聞社)がある。