新たな資源を発掘することを夢見て、金属工学と物理探査工学に没頭した学生時代。「ITとは無縁な世界に身を投じるつもりだった」ソフト開発会社、ジオ・システム・ソリューションを率いる中山圭子社長は当時をこう振り返る。新卒で入った会社でソフト開発に携わったことが大きな転機となった。
「まるでパズルを解いた時のような充実感」この感覚に魅せられた。ソフト開発のスキルと知識はすべて独学。大学時代の研究テーマを生かし、電波強度解析や地震情報伝達ソフトなどを手がけてきた。大学を卒業してすぐに結婚。「思い描いた未来を実現するための道が、多少狭まったのは確か」だ。その後も夫の転勤、2度の出産と、仕事だけに専念できる環境は、社会に出た時から持ち合わせていない。しかし、その都度夫と交渉。「もともと勝気な性格で、折れない性格ですから」と夫は笑う。
昨年、片手間で書き上げた提案書がIPAの「未踏ソフトウェア創造事業」に採択された。より開発に没頭できる環境を手に入れ、「電子地図上で空間情報を描くためのGISツール」を作り上げた。経営者であり、プログラマー。妻であり、2児の母――。「ただ欲張りなだけ」。終始柔らかな表情には、家庭人としての優しさを感じさせる。だが、「このツールを必ず普及させて、会社を大きくする」。そう語る顔には、妻や母の雰囲気は寸分も漂わせない。
プロフィール
中山 圭子
(なかやま けいこ)1965年、福岡県生まれ。91年、早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。93年、熊本構造計画研究所入社。ソフト開発に携わる。98年、オフィス・エラワン設立。98―99年に、科学技術庁(現・文部科学省)防災科学技術研究所の特別研究支援員として、「リアルタイム地震情報伝達システム」の構築支援に携わる。01年、ジオ・システム・ソリューション設立。02年、情報処理振興事業協会(IPA)の「未踏ソフトウェア創造事業」の採択を受け、「インターネットを利用した空間データ作成・参照GISプログラム」を開発。