「このまま放置できない」――。長男が通う学校の授業参観で、教育の現状に愕然とする。その勢いそのままに「日本の教育を変えたい」と2001年3月、自ら起案しNTT東日本の100%出資で教育コンテンツ流通の会社を設立、社長に就任した。元は電話交換機のスイッチや電話サービスのソフトウェア開発に携わる技術者。「あるボス(上司)に人生を変えられた」
今では、“伝説的な部署”と語り伝えられるマルチメディア関連の新企業を育成する部署に「引き込まれた」という。その後、NTT東日本が10億円以上を投じて事業化した、学校のインターネット導入支援「こねっと・プラン」に携わる。この事業は、学校の意識を一変させ、文部省(現・文部科学省)を目覚めさせた。その“立役者の1人”だ。
「インターネットの向こうに豊かな教材がある。そんな学びの場を作りたい」最近、「『子供の大半が宿題をやらない』という教師の悩みを聞く」そうだ。これを一気に解決した同社のASPサービス「WEBで宿題」が静かなブームになっている。インターネットを介し会社で子供の家庭学習の状況を把握でき、「父親が子育てに参加する」。次なる目標は「学校を作る」ことだという。
プロフィール
池尻 稔
(いけじり みのる)1955年、東京都生まれ。97年、早稲田大学理工学部卒業。同年、日本電信電話公社に入社。85年に同社が民営化しNTTになり、86年、技術調査員。90年、同熊本支店設備部長、フリーダイヤルサービスのソフト開発を担当。92年、同通信ソフトウェア本部主幹技師。95年、同マルチメディアビジネス開発部担当部長。99年にNTTが東西に分割し、00年、NTT東日本でマルチメディア推進部担当部長。01年、NTT-EIを設立し社長に就任。