名古屋・大須商店街の振興に尽力してきた萬松寺副住職の大藤元裕氏。パソコン専門店が大須に集まり始めた80年代から、現在の“大須電気街”の形成に至るまで、大須のIT集積化に力を入れてきた。 「江戸時代から寺は、結婚から街づくりまでカバーする総合プランナーだった」だが、パソコンブームが去り、大須電気街は次の成長に向けた模索を始めている。
「このままでは、大須は死活問題に直面する。こうした危機意識が大須商店街全体に広がった。全国の商店街のなかでも、この危機意識の強さは抜きんでているはず」この危機意識が、ここ数十年懸案となっていた萬松寺門前町の再開発事業を加速させた。昨年12月、着工からおよそ5年かかって萬松寺ビルや約800台を収容する立体駐車場、商業ビルOSU301など、一連の再開発事業が完了した。集客数は一段と増えた。
ある大須パソコン販売店幹部は、「5年前に比べ、大須商店街を訪れる客数は3倍くらい増えた印象だ」と、成長しつづける商店街を高く評価する。副住職は、「寺の発展と商店街の発展は同じベクトルであるべき」と、個々の商店の力を束ね、門前町と寺の発展に結びつける。「大須には大資本によるテーマパークはない。逆に言えば、商店街全体が大きなテーマパークだ」
プロフィール
大藤 元裕
(だいどう げんゆう)1958年、愛知県・名古屋市生まれ。80年、愛知学院大学文学部宗教学科卒業。同年、大本山総持寺へ。88年、父・伊藤治雄氏が住職を務める萬松寺に入る。89年、グッドウィル取締役就任。96年、S・M・C設立、代表取締役就任。97年、グッドウィル取締役を退任。02年、萬松寺責任役員に就任。