最初の勤務先である新日本製鉄では、プラントエンジニアリング部門を手始めに、IT関連の新規事業の開拓に携わった。折りしも「鉄冷え」で製鉄業界は高炉の停止や新規事業参入を画策していた時期。「新日鉄では、エンジニアリング計算を高速化するためのパラレルプロセッシング技術の開発に関わっていた」。今で言う超並列コンピュータの検討を行っていたわけだ。
転機になったのは88年に新日鉄から派遣されて、カリフォルニア工科大学の研究生となったこと。ソフトウェア開発を行うだけでなく、「シリコンバレーの活気に触れた」。そのまま米国にとどまり、「そろそろ帰って来い、と言われた」94年に米でシステムコンサルティングのベンチャー企業、Infogyを設立した。そこでモノを言ったのが、鉄鋼メーカーの巨大システムの経験。
顧客には米連邦捜査局(FBI)や米航空宇宙局(NASA)、東京電力、NTT、新日鉄など錚々たる大組織が名を連ねた。「さすがにFBIやNASAなどが顧客になるときの身上調査は厳しかった」と笑って当時を振り返る。創業社長兼CEOを務めるAuriQ Systemsで開発したウェブ解析ツールの顧客もイオングループや日本航空システムグループなど大手企業が目白押し。「オンラインビジネスはますます拡大するウェブ解析のニーズは広がっている」。今では1か月おきに日本とカリフォルニアを往復する多忙な日々を送る。
プロフィール
幾留 浩一郎
(いくどめ こういちろう)1958年鹿児島県生まれ。83年、東京工業大学卒業。同年4月新日鉄入社。88─90年、カリフォルニア工科大派遣。94年、大規模システム技術のコンサルティングビジネスのInfogy社を設立。96年、カリフォルニア州パサデナにAuriQ Systemsを設立。02年4月、ベンチャーファンドとともに日本にオーリック・システムズを設立し副社長兼CTOに就任。