大学時代にLinuxに出会い、その技術に魅せられ、勢いそのままHDEを設立。以来、Linux関連ソフト開発にこだわり、今年11月で9年目を迎える。「Linuxと言って理解してもらえるのは、ここ2-3年の話。それ以前は門前払いが当たり前。歯痒い思いも悔しさも、腐るほど経験した」相手にされなくても、Linuxの可能性を信じ続けた。
創業当時は、「UNIXマシンを買えない中小企業にUNIX同様の環境を」と、Linuxサーバーをもって全国の顧客を回り、インテグレーションもした。「ビジネス感覚がなかったから、代金をとり損ねたこともあったし、黒字倒産しそうにもなった」Linuxが社会に評価され始めた昨今。今でこそビジネスは右肩上がりだが、周りが就職活動で慌しくなった時、会社を潰して大手IT企業に就職するか、会社を続けるか、悩んだ過去がある。
「柔軟性とスピードが求められるコンピュータ業界。若い自分でも太刀打ちできる隙間が必ずある。自分の存在価値を訴えるための最良の方法を選んだ」HDEが開発したLGWAN向けLinuxゲートウェイサーバー管理ソフトは、NECや富士通などの錚錚たる大手ITベンダーが担ぎ手となり、約1000自治体に導入した。全自治体の約3分の1が利用していることになる。「後追いではなく、自分にしかできないことで、新しい価値を社会にもたらしたい。それだけなんです」
プロフィール
小椋 一宏
(おぐら かずひろ)1975年、米ニューヨーク州生まれ。81年、日本に帰国。99年、一橋大学経済学部卒業。大学在学中にコンピュータ関連のアルバイトをしているなかでLinuxを知り、96年にLinux関連ソフト開発企業のホライズン・デジタル・エンタープライズ(HDE)を設立、代表取締役社長に就任。