オープンソースソフト(OSS)の世界では、「自由にものづくりをしたい」、「何かに縛られたくない」という開発者の意向を尊重する文化がある。ウェブブラウザとして知られている「モジラ」も開発者の意向を反映したOSSコミュニティのなかから生まれた。モジラを管理する非営利法人の米モジラ財団の日本支部Mozilla Japanの理事に就いた瀧田さんは、「世の中のものづくりは、義務的にしている人と、好きでしている人の2種類いるとしたら、わたしは完全に後者」と、コミュニティの開発者に近い価値観をもつ。好きで飛び込んだOSSの世界だけに思い入れも強い。
しかし、「コミュニティだけでは、いくら良いソフトをつくっても普及に弾みをつけられない。ソフトを有効に活用するためのシステム構築やサポート・サービスに責任を持ち、普及促進を図る機関が必要」だと判断。Mozilla Japan設立に参画した。顧客ターゲットである企業側にも、自社の情報システムにOSSを取り入れたいという需要が高まっている。Linuxの普及を見れば明らかだ。「モジラは単なるブラウザではなく、XMLをベースとした次世代アプリケーションのプラットフォームとして活用できる」と、将来を見越した拡張性の高さを訴える。利益を追求しない非営利活動だが、「手塩にかけたソフトが社会の発展に役立つのは純粋にうれしい」と、好きだからこそできる強みを最大限に生かす。
プロフィール
瀧田 佐登子
(たきた さとこ)1963年、鳥取県生まれ。日電東芝情報システム(現・NECトータルインテグレーションサービス)、富士ゼロックス情報システム、東芝などを経て、96年、日本ネットスケープ・コミュニケーションズ入社。01年、米AOL/Netscapeとコンサルタント契約を交わし、国内の金融事業者向けの製品サポートおよび日本語版製品マネージメントを担当。04年7月、Mozilla Japan設立。理事に就任。