10月上旬、日本に戻ってきた。元シマンテック日本法人のメンバーが立ち上げた、セキュアブレインでの新たな仕事のためだ。
「第一線で仕事がしたい」と、シマンテック日本法人入社後、わずか1年ほどで米本社勤務を志望。約7年間、米本社でコンピュータウイルスの調査研究・解析に努めてきた。それが一転。日本のベンチャー企業への転進を決意した。
“日本発、世界で売れるソフト”を作りたい、という成田明彦(セキュアブレイン)社長兼CEOの想いに共感したからだが、理由はそれだけではない。
「自分の持っている知識と経験すべてを、日本にフィードバックしたい」
ソフト開発に仕事は制約しない。むしろ、情報セキュリティに対する啓蒙、セキュリティ技術者の育成、コンサルティングなど、新領域に意欲を燃やす。大企業でも中小企業でも顧客は絞らない。とにかく、日本のセキュリティに対する意識を変えることが、セキュアブレインでの理念。
「日本人は損している。海外製ソフトが大半だから日本特有の要望なんて反映されないし、情報も数時間遅れて届く。そんな環境に甘んじていられる程、今のネット環境は安全ではない」
小学校から大学卒業まで米国で過ごし、日本語よりも英語が得意。久しぶりの日本での生活に少々の戸惑いがあるのは確か。それでも、ウイルス解析のエキスパートが、トップベンダーの第一線を捨てて選んだのは、日本。
「海外で働いていても、やっぱり日本の発展を最終的に考えてしまうんです」
プロフィール
山村 元昭
(やまむら もとあき)1967年、熊本県生まれ。6─22歳まで米イリノイ州、シカゴで過ごす。大学卒業後、日本に帰国。90年、沖電気工業入社。UNIXのOS関連ソフトウェアの研究開発を担当。93年、山田洋行入社。アンチウイルス製品「F─Prot(現F─Secure)」の技術およびサポートを担当。97年、シマンテック日本法人に入社。ウイルス解析専門組織を立ち上げる。98年、米シマンテックに移り、コンピュータの脆弱性などを研究するワールドワイド研究開発ディレクターを務める。04年10月、帰国。セキュアブレインの設立に参加。フィッシング詐欺対策ソフトウェア「フィッシュウォール」の開発・販売に従事。