鈴木加奈美さんは、パソコン周辺機器の世界で、優れたデザインの製品づくりを最も重視している。元々は、アクセサリーや服飾関係のデザイナー。そのセンスとノウハウを周辺機器に生かす。
周辺機器メーカーのプリンストンテクノロジーが提案する、競合他社とは一線を画す独特のデザイン。その仕掛け人である。
プリンストンに入社後、デザインを担当した製品は、「iPod」対応スピーカーなど約3年間で60種類以上。既存製品のパッケージデザインを自分流にアレンジして再出荷したところ、販売台数が2倍に伸びた製品もある。一方で、「コストを考えたらデザインは追求できない」と、採算度外視でデザインを追い求めることも。とにかく、こだわるのはデザイン。差別化要素をスペックや価格ではなくデザインに求める。
パソコン業界でのキャリアは浅い。技術に詳しいわけでもない。だが、「人に教えてもらうのは嫌い」。根っからの負けず嫌いで、身に付けた知識はほとんどが独学。ユーザーのニーズや流行を探るために、ショップで2─3時間過ごすこともある。製造現場に足を運び、自ら最終チェックを行うことも多い。
手がける製品は多く、多忙な日々が続くが、「粘りとしつこさ」が信条。手抜きも妥協もしない。
「デザインが良くてその製品を選ぶ。周辺機器の世界ではあまりありませんよね。周辺機器でもデザインで勝負できる製品を、もっと増やしたいんです」
プロフィール
鈴木 加奈美
(すずき かなみ)愛知県名古屋市出身。金城学院短期大学文学部英文学科卒業。独学でデザインを学び、1991年にアクセサリーや洋服などのデザインを手がけるガブリエルペコに入社。デザイナーとして活躍。94年、台湾に移り、婦人靴の企画、デザイン、製造、販売を手がけるホンタイ製靴に勤務。00年、台湾のパソコン周辺機器メーカー、エーテンインターナショナルに入社。02年、日本に戻りプリンストンテクノロジーに入社。