「作るだけじゃ駄目なんですね。伝えることが必要。企業なら、開発した製品を使えば、どう幸せになれるかを見せている。学生とはいえ、相手に伝え感じてもらわなければいけないと思うんです」
2年生で初参加した全国高等専門学校プログラミングコンテストでは、ゲーム性も備えた「次世代タイピング練習システム」で、いきなり最優秀賞を受賞した。
アイデアを出し、どのような目的をどう実現するかを決め、そのためのプログラムを組む。ソフト開発の流れをつかんだつもりでいた。しかし、3年生の時の「次世代トータルメディアゲートウェイ」は、作るだけで手一杯。伝えることができなかった。結果は審査員特別賞。「やっぱり、という感じだった」と振り返る。
4年生から戦略を変えた。全工程を自分で担うのでなく、共同開発を機能させることを自分に課して、再び最優秀賞に。インターンシップで、企業の中に身を置いたことも役立った。「役割り分担を明確にすれば、開発効率も上がる。後輩を育成しながら、自分は企画とプレゼンをメインとし、全体を監視する。よりプロに近い意識になりました」という。
5年生となった昨年は、人と人がネットワークでつながるという前年の作品コンセプトを全く別の角度から実現。「超次元コラボレーションブラウザ」で見事連覇を達成した。「つながる」ということが目下の最大のテーマ。「夢に見たこともちゃんと日記につけています。今は勉強の時期ですが、いずれITの流れを変えたい」と、大きな眼が一層輝く。
プロフィール
井上 恭輔
(いのうえ きょうすけ)1985年、広島県福山市生まれ。中学生時代にパソコンに熱中。1年生の時にオリジナル英単語練習ソフト「English君」を開発。情報工学科への進学を志望。01年4月、国立津山工業高等専門学校情報工学科に入学。2年生の02年10月に全国高等専門学校プログラミングコンテストに初参加、自由部門で最優秀賞(文部科学大臣賞)受賞。03年は審査員特別賞を受賞し、04年と05年は連続で最優秀賞(文部科学大臣賞)を受賞。06年4月、同高専の専攻科に進学予定。