ベトナム出身のダンさんはソフトウェアのオフショア開発の支援を行っている。来年で来日17年。ベトナムで育った時間とほぼ同じになる。日本語と日本文化に精通し、趣味は阿波踊りで笛を吹くこと。徳島のソフト開発会社で影響を受けた。
03年、TISはベトナムでのオフショア開発を本格化、それに伴い両国の橋渡し役に。「有力なオフショア開発先の中国に比べて日本語の堪能なSEが少なく、開発自体の経験も浅い」ことから当初は苦労が尽きなかった。
ベトナムでの開発パートナー企業に選んだハノイのFPTソフトウェアはここ3年で従業員が5倍の1500人余りに増えた。日本などからの仕事をこなすのに新規で人手を補ったためだ。結果的に若い技術者が増えた。
「業務ノウハウやプロジェクト管理能力で未熟なところはあるものの、ベトナムの潜在力は極めて大きい」と、年5-6回は故郷に足を運ぶダンさんは実感する。
「チームワークを大切にし、プロジェクトを成功させようという意識が強い」という。オフショア大国・中国のカントリーリスクを回避するサブ的な位置づけに甘んじる理由はどこにもない。
ビジネス的にみたベトナムの魅力は中国の3分の2とも言われる人件費の安さだ。しかし「安い」というだけでは新たな付加価値は生まれにくい。
「今は個々のプロジェクトを支援するので手一杯。将来はもう少しベトナムIT産業の振興を視野に入れたビジネスを模索したい」。日本や中国にはないベトナムの魅力、強みを伸ばしていく必要があると考える。
プロフィール
ダン・アイン・チュン
(ダン・アイン・チュン)1972年、ベトナム・ハノイ市生まれ。94年、釧路工業高等専門学校卒業。96年、豊橋技術科学大学卒業。98年、同大修士課程修了。同年、ジャストシステム入社。03年、TIS入社。