結婚、出産、育児…。会社に勤めながら女性として一通りの経験を積んできた。“寿退社”で会社を去る後輩社員が少なくないなかで「自分の経験を少しでも仕事と家庭の両立に役立ててもらいたい」。そう考え、女性の能力を引き出す活動を始めた。
「IT業界は他に比べて歴史が浅いためか女性軽視の風潮はさほど根づいていない。社内をヒアリングしても“女性だから差別を受けている”という声はごく少数だ」
しかし実態は違う。全社員の約14%を女性が占めているにもかかわらず、課長以上の管理職になると女性比率は3%以下に下がってしまう。なぜなのか。
「会社として産休や育児休暇など必要な支援策は講じているものの、実際に活用してワーク・ライフバランスを保っている事例が少なすぎる」のが、原因のひとつ。
「だったらまずは自分がそのモデルケースになり、後輩たちの参考にしてもらおう」と決めた。労務管理の仕事を13年やってきたことから勤務ルールについても詳しい。
他の女性管理職にも協力してもらい、後輩社員の相談に1対1で応じるメンター制度を5月から段階的に始めることにした。
「両親の支援や夫の理解など、女性が仕事を続けていくうえで、実は家庭のなかにも大切なポイントが数多くある。こうしたことを理解するきっかけにしてほしい」
成功事例を増やせば、後輩たちがそれに倣う好循環が生まれる。
3年後の2010年には管理職に占める女性比率を少なくとも今の倍に増やしたい。会社にとっても有効な人的資源開発になるが、それ以上に「仕事を辞めずに済む女性がひとりでも少なくなればいい」と小澤さんは思う。
プロフィール
小澤 聡子
(おざわ さとこ)埼玉県生まれ。1994年、明治大学卒業。同年、中堅ゼネコン入社。02年、CRCソリューションズ(現伊藤忠テクノソリューションズ)入社。一貫して人事労務の仕事に従事。07年1月、ダイバーシティ推進課長。自ら先頭に立って女性の人的資源開発に乗り出す。