携帯電話でパソコン用のホームページが自由に閲覧できるブラウザソフトを開発。群を抜いた高速性や、パケット定額制への対応などが評価され、たちまちヒット商品に育った。フルブラウザ技術の先駆け企業として注目を集める。
学生時代からプログラムづくりに没頭し、「とにかく最高の技術を身につける」ことにこだわった。在学中につくったFTP(ファイル転送)ソフトの「小次郎」は人気を博し、月収100万円に達することも。ソフト開発に傾注するあまり卒業が2年遅れた。
卒業後の勤め先で志を同じくする仲間と出会い、起業することに。麻雀ゲームなどを開発するが、鳴かず飛ばずで、やむを得ず下請けのソフト開発で日銭を稼ぐことを決断。「ビジネスがこんなに厳しいものとは…」。順風満帆だった人生の挫折の瞬間だった。
昼間営業して夜中に会社で数時間の仮眠をとりながらソフトをつくる。それでも営業経験のなさから苦戦を強いられる。疲労でミスが増え、「死ぬ思い」をした。
請け負い仕事に追われながらも、「自分たちのソフトを開発する」という夢をあきらめなかった。創業5年目にして携帯電話用のフルブラウザソフトをつくりあげる。今後はメールやスケジューラーなどモバイル向けソフトの品揃えを増やす予定である。
上京も考えたが、地元名古屋にとどまることを決めた。保守的と言われる土地柄だけに、「起業を目指す若者の刺激になれば」と、自らを手本にしてもらう考えだ。
プロフィール
神谷 栄治
(かみや えいじ)1973年、名古屋生まれ。98年、名古屋工業大学を卒業。在学中にFTPソフトの「小次郎」をシェアウェア方式で販売。98年、三次元CADなどを開発するソフトウェアベンダーに就職。00年、アイビス設立し代表取締役社長に。05年、携帯電話用のフルブラウザソフト「ibis Browser」を開発。