富士通が光コンポーネント分野で技術革新を遂げた。インターネットの急速な普及による大容量への需要拡大を契機に、DWDM(高密度波長分割多重)方式による光電送装置のニーズが高まっている。そうしたなか、国内の光波長として“フルバンド”といわれる88種類に対応した「波長可変トランスポンダ」を開発した。この技術は、「平成19年度文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)」を受賞。その中核人物が光モジュール事業本部第一商品部長の宮木裕司氏だ。
フルバンド波長可変トランスポンダを開発できたのは、「4種類の波長可変が可能なトランスポンダの開発経緯があったから」と振り返る。富士通は、波長可変の開発という点では他社に出遅れていた。「失敗も数知れなかった」。しかし、02年に4波長可変を開発し、05年に88波長の可変に対応した。わずか3年間で一気にフルバンド化に成功したというわけだ。
画期的な技術は、トランスポンダのユーザーとなる通信事業者のコスト削減につながった。従来、88波長に合わせた光電送システムを構築するには、1波長にしか対応していないトランスポンダであれば88機種を必要としたが、同トランスポンダにより1機種だけ購入すれば済むようになった。
富士通のビジネス拡大にも結びついている。フルバンド波長可変トランスポンダの光モジュール「300pin MSA」は、06年度の販売が前年度と比べて1.5倍にアップした。
波長可変で次のステップは、小型光モジュールでのフルバンド化。現在では、通常サイズの光モジュールで88波長を可能としているが、「小型スロット規格『XFP』で必ず実現させる」。技術の追求に余念がない。
プロフィール
宮木 裕司
(みやき ゆうじ)1960年生まれ。岐阜工業高等専門学校電気工学科卒業。81年、富士通入社。基幹電送装置の開発に携わる。03年、光モジュール部門の独立事業化にともない、光ファイバ通信装置の光入出力インターフェースモジュールの開発に従事。世界市場への参入に向けた戦略商品である業界標準の波長可変トランスポンダモジュールの改良に尽力している。